知的障害の娘の人生に「恋愛は絶対必要」、男女交際で成長実感した母 でも出産には迷い…忘れられない義母の言葉「兄姉の人生台無しに」
公共交通機関の利用法を身に付けることは、自立する上で欠かせない。ただ、知的障害者にとってはハードルの一つだ。香奈さんは小学生の頃、バスや電車が決まった路線を走ることが理解できなかった。岩山さんは「行き先はここを見るんやで」と傘を使ってバスの上部を指し、何度も1人で乗せて練習した。見守りのためにバイクで追うと、香奈さんは窓に張り付いて不安そうに岩山さんを見つめていた。それでも「頑張れ」と祈りながら続けた。 香奈さんが本格的に電車とバス通学になったのは、特別支援学校の高等部からだ。初めは不安で泣いて岩山さんに電話してきたこともある。それでもなんとか自力で通い、最終的には忘れ物を駅員に説明して取り戻すまでに成長した。 小学生の頃から絵画などいろいろな習い事にも通わせた。いつ親を頼れなくなくなるか分からない。「信頼できる大人にたくさん出会ってほしい」という思いがあった。 19歳となった今も、香奈さんは文字の読み書きがうまくできず、精神面は幼い。だが、日常会話はでき、手先も器用だ。迷いながらも電車で目的地に行くことができる。岩山さんは理由をこう説明する。「点と点がたくさんあると、つながって面になる。香奈が世界をよく理解しているのは、『経験』というたくさんの点があるからだと思う」 ▽恋愛が「全ての意欲のもとに」
香奈さんは2度、知的障害のある男子生徒と交際したことがある。岩山さんが送り迎えをして公園や映画館などでデートした。最初は高等部1年の時に、二つ上の生徒と。ただ、そのときは、彼氏よりもアイドルグループの「嵐」が好きだった。相手に気遣いできず、4カ月で振られてしまった。 高等部3年だった昨年には、三つ下の男子生徒と10カ月間付き合った。「嵐と彼氏ならどっちとデートに行く?」と聞くと「彼」と答えるようになったという。別れた後は、落ち込む香奈さんを岩山さんと長女でカフェやカラオケに連れ出し、慰めた。 「恋愛が全ての意欲のもとになっていた」と岩山さん。デートのために服を買い、季節に合ったおしゃれをするように。結婚や子育てが目標になり、自分のことを自分でやる動機になった。お金が必要だということも理解し、仕事の意欲にもつながった。「娘が楽しい人生を過ごすために恋愛は絶対必要だと実感しました」 ▽出産は「答え出ない」