知的障害の娘の人生に「恋愛は絶対必要」、男女交際で成長実感した母 でも出産には迷い…忘れられない義母の言葉「兄姉の人生台無しに」
北海道のグループホームで、結婚や同棲を希望する知的障害者が運営法人から求められ、不妊手術や処置を受けていた問題が昨年、明らかになった。知的障害者に子育ては難しいのか。当事者の親は、子どもの自己実現と家族の負担のはざまで葛藤を抱えている。兵庫県明石市の岩山洋子さん(53)=仮名=は、障害のある娘が恋愛を通じて成長する姿を見てきた。将来の子育てにもろ手で賛成はできない。それでも「当たり前の青春を味わってほしい」と願い、成長を見守っている。(共同通信=沢田和樹) 「めちゃくちゃ心配」された知的障害の女性が出産、「めっちゃいいお母さん」に 子育てを可能にした秘訣とは
※この記事は記者が音声でも解説しています。共同通信Podcast【きくリポ】からお聞きください。https://omny.fm/shows/news-2/29 ▽表面上は懸命に育児、内心は「ここから落としたら…」 今年4月、公園で岩山さんと寄り添って歩いていた次女の香奈さん(19)=仮名=は、桜の木を見つけると駆け出した。岩山さんはその姿を見つめ、「娘の初デートはここだったんです。バドミントンをして、駅でご飯を食べて…」とつぶやいた。 香奈さんは3人きょうだいの末っ子。ダウン症で重度の知的障害がある。両親と同居して作業所に通い、クッキーやジャムを作っている。 世間では知的障害者への差別意識がまだ残る。相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年に起きた殺傷事件では、元職員の植松聖死刑囚が「意思疎通が取れない障害者は不幸を生む」と話し、インターネットでは同調する声も多かった。周囲の援助が欠かせず「他人に迷惑をかけている」と見なされることも多い。
岩山さんも香奈さんが生まれた当時は、障害の中でも「知的障害」であることに強いショックを受けた。実は長男と長女には「誰とも分け隔てなく仲良くなれる子になってほしい」と思い、障害児と過ごす環境のある幼稚園に通わせていた。それなのに、わが子を受け入れられず、自分を責めた。 幼い頃の香奈さんは心肺が弱く、夜も母乳を一口飲んでは眠り、30分で目覚めることの繰り返し。岩山さんは産後半年ほど、ほとんど眠れない日が続いた。ベランダで香奈さんを抱っこし、ふと「ここから落としたら警察に捕まるんかな」との思いが頭をよぎったこともある。表面上は懸命に育児をしていたが、心の中はぐちゃぐちゃだった。 ▽自立へ向けて訓練の日々、「点と点つないで面に」 香奈さんに障害があると分かったとき、義理の母からは「上の子たちを障害児の兄と姉にし、人生を台無しにした」と言われた。「障害のある妹がいることで、兄と姉は結婚できなくなる」とも。これらの言葉は岩山さんの心に刻まれた。子どもの頃から長男と長女には「絶対に迷惑かけへんから」と言い、香奈さんが自立できるよう懸命に育てた。