「締め付けられていたものから解放された感覚」引退を決断したカープ野村祐輔の思い
2012年のカープ入団以来、先発一筋を貫いてきた野村祐輔が今シーズン限りでの引退を決断した。制球力を武器に、投球術で打者を打ち取るスタイルで積み重ねた白星は80勝。新人王、最多勝など輝かしい実績を残し、先発の軸として3連覇も支えた。211試合連続先発は、前人未到の日本記録だ。ここでは背番号19に、ラスト登板直前に聞いたロングインタビューをお届けする。(全2回/第1回) 【写真】入団会見時の初々しい野村祐輔 ◆引退決断後はすっきりした気持ち ─シーズン中の9月27日に引退を発表されました。発表後は、どのような心境で過ごしていましたか? 「引退を決めてからは、すっきりした気持ちでした。逆に発表するまでは、すごくモヤモヤする気持ちがありましたね」 ─引退について、驚きの声もあったと思いますが、周囲からの反響はいかがでしたか? 「『よく頑張った』と言ってくださる方ばかりでした。そういう声をいただけることはありがたいですし、僕の中では印象深いです。『寂しくなるな』という声であったり、いろいろ声をかけていただいてうれしかったですね」 ─10月5日が現役ラスト登板となります(取材は9月下旬)。引退登板に向けての練習は、やはりこれまでと違う感覚ですか? 「1日1日がより早く感じますね。みんなとプレー、練習できる時間が限られてきているので、練習を一緒にしながら、そういう思いを感じながら、噛み締めながら練習してきました」 ─慣れ親しんだマツダ スタジアムのマウンドが最後の舞台となり、現役を終えることになります。 「やっぱり、このマウンドで終われるというのは、本当にうれしく思います。これまでたくさんの方々に応援していただいたマウンドなので、この場所で現役を終われるというのは、感謝しかありません」 ─引退登板に向かうのは、これまでと違う感覚ですか? 「これまでの登板の中で、一番不安かもしれないですね(苦笑)。この日は僕のために時間を割いていただいている舞台なので、感謝の気持ちを持ちながら上がりたいですが、やはり不安な部分がありますね」 ─改めて、引退を決断することになったきっかけを聞かせてください。 「一番は、ここ数年の登板試合数ですね。一軍での登板機会が少なくなってきた中で、数少ないチャンスで何とか結果を……という状況だったので『そろそろなのかな……』という、そういう葛藤がずっとありました。引退を決断したのは、引退発表の直前くらいです」 ─引退を決断して、どのような気持ちになりましたか? 「決断した後は……いろいろと締め付けられていたものから解放されたような、そういう感覚になりました」 ─ここ数年は、故障等もあり苦しいシーズンが続いていました。野村投手にとってどんな期間でしたか? 「もちろん、苦しい思いがありました。言葉で表すならば『我慢』ですかね。それでも、自分のためにやっていることなので、練習に対する気持ちが変わることはありませんでした。まだまだ上を目指すために、練習に取り組んできましたし、そこでうまくいかなくて自分を緩めてしまうと、後輩に対して示しがつかないですからね。少しでも気持ちを保っておかないといけないと思って過ごした期間でした」 ─多くの若手選手から慕われていたと聞きました。若手選手と過ごす時間は、どんな意味を持つ時間でしたか? 「やはり若い選手はみんなエネルギッシュですし、元気をもらえますよ。一緒に練習をしていて楽しいですし『自分ももっと頑張らないといけない』と、刺激をもらえていました。アドバイスを求められることもありましたが、自分が教えられることならばと、そこは惜しみなく話をさせてもらっていました。せっかく一緒にやっているわけですから、コミュニケーションは大事にしていました」 ─9月29日に由宇練習場で行われたウエスタン・リーグ最終戦では、後輩選手からの胴上げもありました。 「あの日は由宇練習場での最後の試合だったので、首脳陣、スタッフ、選手、ファンの皆様に対して『最後なので挨拶に行く』という目的で行っていました。ですが、記念撮影だったり、試合後に胴上げをしていただいたり、スコアボードに特別な画面を出していただいたり……、そんなことをやっていただけると全く思っていなかったので、驚きましたし、本当にありがたかったですね」 ─プロ13年間を振り返るといろいろな出来事があったと思います。一番思い出に残る出来事は何でしょうか? 「思い出はたくさんありますが……やっぱり2016年のリーグ優勝ですね。2012年にプロに入ってから、1年間やり続ける難しさということを経験させてもらいましたが、入団から4年間はチームとしてもBクラスが続いていました。そういう経験をした上での優勝だったので、すごく感動しました。プレーしていて良かったと思いましたし、あの優勝は忘れられないですね」 (第2回へ続く)
広島アスリートマガジン編集部