20歳の超新星「大藤沙月」がトップ選手へと躍り出た理由 「戦術面」に加えて長けている「能力」とは
女王の座に輝いても不思議はない
そのチャンスを、大藤は見事に生かした。モンペリエでのWTTチャンピオンズでは、自分より格上の平野美宇、伊藤美誠を破り決勝に進出。相手は、成長著しい張本美和だったが、攻めの姿勢を貫き見事に優勝。日本を代表する並みいる3選手を撃破して、飛躍のきっかけとした。そして、世界ランクも急上昇したわけだ。 「その要因は、攻撃面の強化だけではありません。坂本コーチ直伝の鋭いサービスがとても効果的に使われています。これで先手を取って攻め込むことができるのです。ただし、ここまで注目されると、相手から研究されます。得意のサービスも相手に慣れられたとき、どう対応するのか。また、中国のトップ選手との対戦もまだありません。そうした未知数の部分はありますが、日本のトップ選手3人を連続して破ることは並大抵ではありません。更なる飛躍を期待したいですね」(前出のライター) 大藤の特徴は、まだある。コートに近い位置でプレーするだけではなく、少し下がった中陣、あるいは後陣からも強いボールが打てるパワフルさがある。つまり、複数の戦い方を用いることができるのが強みだ。 この11月には、年間チャンピオンを決める「WTTファイナルズ福岡」(11月20~24日、北九州市)が開催される。その大舞台で、再び日本の実力者たちを破るのか。また、中国のトップ選手たちとどんな戦いを繰り広げるのか、楽しみである。さらに、年が明けるとすぐ国内の女王を決める全日本選手権(2025年1月21日~26日、東京体育館)が控えている。早田、伊藤、平野、張本、木原、長崎らが群雄割拠する中で、実力者に三タテを食らわせた台頭著しい大藤がどこまで食い込んでいくか。女王の座に輝いても何ら不思議ではない。注目点がまたひとつ増えた。 ノンフィクションライター 青柳雄介 デイリー新潮編集部
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