学校とも連携、新制度「社会教育士」の仕事の中身 求められるのは「人と地域、情報をつなぐ人材」
学校との連携も期待される、2020年に生まれた新制度
2020年の4月にスタートした「社会教育士」制度。開始から3年半が経ち、現在の講習修了者は約4500人に上る。求められる役割は学校教育に限ったものではないが、探究学習の盛り上がりなども手伝って、称号を取得した人の多くが教職員や行政関係者であるという。具体的にはどんな人材が、どんなことを行っているのか。地域の学校やそれを取り巻く大人たちと、どんなふうに協働することができるのか。埼玉県で社会教育士として精力的に活動する木下通子氏を取材した。 【写真を見る】子どもたちは日頃あまり接することのない新聞に興味津々だった 文部科学省が推進する「社会教育士」制度は、2020年に始まった比較的新しい仕組みだ。「社会教育主事」という専門的教育職員の制度をベースに、より裾野を広げるべく一部改正してスタートが切られた。社会教育主事は都道府県・市町村教育委員会からの発令がなければ就くことができない職務だが、社会教育士の場合は所定の科目を修了すればその称号を得ることができる。想定する対象は教職員や行政職員のほか、NPOや企業に所属する人などさまざま。こうした人材を増やすことで目指すのは、その名のとおり社会全体の学びによって地域の課題を解決することだ。 だが、探究学習における地域連携のニーズなどにより、学校教育とつながる実践も重視されている。例えば地域福祉の視点から子どもの居場所づくりに取り組む例(島根県)では、「居場所」での子どもの様子が小学校としっかり共有されている。岡山県では、小学校の校長自身が社会教育士となり、働き方改革とコミュニティー・スクールの導入を両輪で進めたケースもある。文科省の担当者によると、自治体を対象に行った聞き取り調査でも、社会教育士には学校との連携を望む声が多いそうだ。 木下通子氏は2021年に社会教育士の講習を修了し、現在は主に埼玉県で活動している。彼女の本業は、名門として知られる県立女子高校の学校司書だ。 「本と人をつなぐ仕事がしたいという気持ちから司書になったので、校内でもビブリオバトルを開催したり、先生と協力して探究学習に注力したりしています。また、県内の高校司書と一緒に、『埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本』という企画に取り組んできました。現在勤めている高校には本に親しむ生徒も多いですが、地域のすべての子どもがそうかと言えばそんなことはありません。例えば家に一冊も本がないという子や、書店の存在すら知らないような子もいます。本によって得られる生きる力や広い世界を、そうした子どもたちにも知ってもらうにはどうしたらいいのか。それをずっと考えていました」 そんな折に知ったのが、社会教育士という新たな制度だった。「私は学校司書としては実績のあるほうだと思うのですが」と笑う木下氏だが、学校の外で活動しようとすると「なぜ一介の高校司書が」と言われることもあった。だが社会教育士になれば、地域社会の課題に胸を張って取り組むことができる。「これだ」と思った木下氏はさっそく所定の講習を受け、晴れて社会教育士となった。