NYの平均家賃は約80万円、シカゴの夜の街は閑散…何が好景気だ!米国在住の日本人が語る「物価高の厳しさ」
■ニューヨークの家賃は平均80万円 その大きな要因のひとつが物価高である。2020年からのコロナ禍、供給網の混乱とボトルネック化で一気に物価が高騰した。ミルクや卵、コーヒーにウーバー、身の回りのすべての物やサービスの値段が上がった。 そして2022年、ウクライナ侵攻による原油価格の高騰でさらに物価は上昇。バイデン政権は同年8月、1年半を費やし、悲願であった「インフレ削減法」を成立させたが、あれから2年、今も物の値段は上がり続けている。
レストランで食事をしようものなら、チップを入れて最低でも50ドルはいとも簡単に飛んでいくし、自炊をするためにスーパーに行っても、日に日に更新されていく値札を見ては悲鳴をあげる日々を送っている。 家賃の上昇も甚だしい。ニューヨークのマンハッタンでは2023年、賃貸物件の平均が過去最高となる月5558ドル(約80万円)に達した。サンフランシスコやロサンゼルス、そしてシカゴでも家賃は上がり続けている。たった数歩で一周できてしまうこのシカゴのワンルーム・アパートの家賃も、いつの間にか2000ドル(約30万円)を超えた。
そもそもコロナ禍以前から「都市の高級化」を表す「Gentrification(ジェントリフィケーション)」という語が頻繁に用いられるようになった。もともとこの言葉は、所得の高くない人々が住んでいるエリアを再開発し、富裕層を呼び込むことで不動産価格が釣り上がる現象を指す。 2010年代以降、大都市でジェントリフィケーションが相次いで起こり、その結果、家を失った人々はホームレスとなった。シカゴでも、ダウンタウンに程近いサウスループやウエストループというエリアで再開発が進んだ結果、街にホームレスが急増し治安が悪化した。明日が我が身、という不安の中、街を歩く日々である。
■街は「テナント募集」だらけ では、物価や家賃が上がる中、賃金はどうか。2022年8月、全米で最大規模のコメディクラブ「ラフ・ファクトリー」からコメディアンに向けた一斉メールが届いた。 「ラフ・ファクトリーでは近年の物価上昇を踏まえ、これまでのギャラから以下のような変更を行うこととしました。 平日:40ドル→50ドル 週末:70ドル→80ドル」 ギャラが上がるに越したことはないが、毎日出演してもせいぜいひと月で2000ドルの稼ぎ。家賃を払えば何も残らない。それでもたしかに数値で見ると「賃金は上昇している」と言える。40ドルから50ドルに上がったのなら「25%の上昇」だ。