「THU JAPAN 2023」カイル・バルダ 自分自身に忠実であること 【CINEMORE ACADEMY Vol.26】
自分自身に忠実であること
Q:「storytelling」の「story(物語)」を脚本家が作り、監督が「telling(語る)」という役割分担が一般的ですが、監督としてどのように「storytelling」と対峙していますか? バルダ:脚本家はヴィジョンを持って物語を書いていますが、それを3人の監督に見せたら3通りの作品が出来上がる。俳優はカメラ位置や自分の見せ方を知っていて演技ができるし、カメラマンはアングルや光の操り方を知っている。現場では脚本にない即興も発生するし、人によって必ず違いが出てくる。だから、脚本家が大事にする価値観やテーマを忠実に視覚化するためには、監督の視点も交えながら一緒に形にしていくのが健全なやり方だと思います。 また、アニメーションの場合は、ストーリーボードを作ることが有効です。カメラ位置などを決めながら、そこに発生する空間をどう利用してシーンに意味をもたらすのか、それを考えることができる。実写の場合は、脚本では完璧にみえても撮影現場の空気感やアドリブで差し引きが出てきますが、アニメの場合はストーリーボードを活用することでそれを防ぐことが出来るんです。 Q:映画/アニメ製作において、「ストーリーテリング」を生み出すコツや気をつけていることがあれば教えてください。 バルダ:最善の方法は、ユニークであり自分自身に忠実であること。自分の人生からどういう部分を切り取って伝えられるのか。自分の経験から伝えることは、抵抗が少ないし真実味もあって共感を生む。自分の人生のどの部分を描きたいかを探るのが、最も近道だと思います。 Q:「ストーリーテリング」について、影響を受けた映画や監督、脚本家などいれば教えてください。 バルダ:『JAWS/ジョーズ』(75)と『スター・ウォーズ』シリーズ、『ロード・オブ・ザ・リング』は本と映画の両方好きですね。「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズも好きだし、とにかくファンタジーが大好き。それは別にドラゴンに魅了されているわけではなく、キャラクターベースで人生の浮き沈みがきちんと描かれているからなんです。最近だと、ドゥニ・ヴィルヌーヴの『メッセージ』(16)も好きですね。ヴィルヌーヴ監督の演出はすごく好きで、『DUNE/砂の惑星』(21)の続編も気になってます。こんな映画を作りたいと駆り立てられる作品もあれば、クラシックなものから新しいものまで、影響を受ける作品はたくさんありますね。 次回は脚本家 村井さだゆき氏のインタビューを掲載予定。お楽しみに! 取材・文: 香田史生 CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。 THU JAPAN:https://www.trojan-unicorn.com/ja/bootcamps/thu-japan instagram:@thu_japan
香田史生
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