「THU JAPAN 2023」カイル・バルダ 自分自身に忠実であること 【CINEMORE ACADEMY Vol.26】
自発的に動き出すキャラクター
Q:映画や物語には性格の違う多くのキャラクターが登場しますが、キャラクターの設定や行動はどのように作られるのでしょうか。 バルダ:その物語が誰のストーリーなのかをまず考え、主人公のジャーニー(旅)を描くのに専念します。もし主人公が二人になる場合は、シーンによってどの視点から描くのかを考えます。また、キャラクターが登場する配分も気にかけています。登場時間が少なすぎて存在が薄くなると、キャラクターも弱くなってしまう。編集でいい塩梅に調整することもあります。 でも本質的には、何をどう描きたいかという視点が大事になってくる。「ゲーム・オブ・スローンズ」がわかりやすい例で、エピソードの題名になっているキャラクターを描き、その主人公視点で描かれていることがよくありますよね。 Q:自分で設定した想像を超えてキャラクターたちが動き出す(行動する)ことはありますか?またそれはどんなときでしょうか。 バルダ:子供のときは自分で描いた一枚の絵だけで物語が完結していましたが、大人になると絵を描くだけではなく、自分の頭の中で考えた様々なものを足していくようになります。例えばミニオンの絵コンテを描いているときは、ミニオンに何かをさせて、キャラクター自ら自発的に動くように仕向けています。そういうことをしながら、面白さやストーリーを検証していく。それで様々なアイデアを得ることができるんです。 同僚と仕事をするときも同じです。みんなの意見を取り入れつつ、物語がうまくいくかどうか検証していくことは大切ですね。作品作りはコラボレーションの賜物であって、1人の人間から作られるものではない。誰かがストーリーのアイデアを出してきて、例えそれが良いものには思えなくても、すぐに否定するのではなく、それを採用した場合にどうなるかを考える。それが思いもよらないものに発展することだってあるんです。 Q:物語にはサプライズも必要です。キャラクターの性格を踏まえた上で、どれだけ大胆な行動を取らせるのか?そこの振り幅はどのように決められているのでしょうか? バルダ:色々試してみます。キャラクターに色んなことをやらせてみて、いいときもあれば想像の範囲内でつまらないこともある。オーディエンスが期待していることをあえてその通りに行って、最後で裏切るパターンもある。何をやったとしても、そのキャラクターの動きや行動に嘘や無理がなければ、いいサプライズとして機能すると思います。僕はよく妻と一緒に映画を観るのですが、彼女は登場人物が次に言うセリフを当てるのが得意なんです(笑)。そのように先が予測されるものは観ていても時間の無駄。決まりきった展開に陥らないよう常に意識しています。
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