なぜ『SHOGUN 将軍』は世界的な成功を収めたのか? 時代劇に精通するライターが徹底解説。真田広之が起こした革命とは?
アメリカのエミー賞で18冠に輝き、国内外で注目を集めているドラマ『SHOGUN 将軍』。本作の快挙は、消えつつあった時代劇の伝統に再び火をともしたと言われている。そこで今回は、本作の人気の理由を、過去の時代劇を引き合いに考察。そこから垣間見えたのは、主演・真田広之の先人たちへの熱い思いだった。(文・Nui)
アメリカを席巻した「サムライ・フィルム」
真田広之主演・プロデュースで米国で話題になったドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』は、2024年9月に発表されたエミー賞で18部門を受賞、ようやく日本のメディアでも大々的に取り上げられ、時代劇に縁のない日本人の間にも存在が浸透した。 実は、アメリカでの『SHOGUN 将軍』人気のベースは歴史が長い。1975年に発表されたイギリス人作家ジェームズ・クラべルの小説『将軍』を原作とし、1980年にアメリカで三船敏郎が出演したドラマが作られた。 しかも最高視聴率36.9パーセントを打ち出す大ヒットを記録。これを受けて、同年、同国の映画プロデューサーであるロジャー・コーマンが日本の時代劇映画『子連れ狼』(1972~1974)を発掘・編集し、1980年に『ショーグン・アサシン』としてヒットさせた。 さらにこの『ショーグン・アサシン』に衝撃を受けたアメコミ作家らが、『子連れ狼』の原作劇画(小池一夫・原作/小島剛夕・画)を英訳で刊行。2002年には影響を受けたコミック『ロード・トゥ・パーディション』が映画化される。 『子連れ狼』の人気は根強く、近年では、2019年にオマージュと思しきスターウォーズシリーズの実写ドラマ『マンダロリアン』が配信開始。翌年、人気カートゥーンシリーズの『リック・アンド・モーティ』では、『子連れ狼』パロディと三船版ドラマ『将軍SHŌGUN』人気も取り入れた日本制作の短編『Samurai & Shogun』(2020年)を発表。再生回数は1600万回以上にも及んでいる。 と、ざっと追いかけたが、こうしてアメリカには、2024年の真田版『SHOGUN 将軍』ヒット以前に綿々と続く流れが存在する。