<鈴村健一>「ガンダムSEED」 シン・アスカの「難しさ」 20年経て見えたもの
◇シンの本質とは?
シンは戦争に巻き込まれ、両親と妹を目の前で失い、戦争に身を投じることになる。アスラン・ザラとぶつかることも多かった。キラ・ヤマトと敵対するが、戦後に和解する。「SEED DESTINY」の2年後が舞台となる「SEED FREEDOM」ではラクス・クラインを初代総裁とする世界平和監視機構・コンパスに入り、キラと共に戦いのない世界を目指そうとする。シンは若さ故の不安定さがあり、そこが魅力ではあるが、鈴村さんは「難しいんですよね……」と語る。
「本来はとても明るく元気な男の子だけど、戦争によって抑えつけられ、憎しみを持って、何かに当たり散らす。『SEED DESTINY』は明るく元気なところがほとんど見えなくて、ベースが分からないまま演じなければいけませんでした。彼の本質を捉えてもらいたいと思いながら演じたのですが、ギャップを見せづらいところがあって、ステラとのやり取りで、優しいところも見えるのですが、彼の本質を捉えるのが難しく、演じていて大変でした。そこを整理するのが役者の仕事ですが、まあ、難しい役です」
当時、シンと向き合う中で感じたことがあった。
「年齢は当時の方がシンに近いけど、あの頃の自分のスキルで演じるのが難しいところがありました。キャラクターが多い作品でもあるので、シンが誰かにぶつかっているところ以外が、実はあまり描かれていません。本当はこういう人なんだということを、想像で埋めていかなければいけませんでした。アウトプットしている芝居は、何かにぶつかったり、吐き出すようなせりふが多く、そればかりしていると、視野が狭くなるんです。表現されていない部分を加味していくのが難しくて……」
「SEED FREEDOM」のシンは、本来の明るさが分かりやすく描かれているという。
「素直な子であることが明確に描かれていて、『SEED DESTINY』の頃よりも単純です。『SEED DESTINY』も単純なところがあって、褒められたらうれしく、怒られたら噛みつく。直情的で子供っぽい。『SEED FREEDOM』はそれがより顕著で、愛らしいんです。若い頃は、シンを見て、自分の嫌なところを描かれているように感じるから、共感しづらいかもしれないですが、俯瞰(ふかん)して見られるようになると、何て可愛いんだろう、よしよし……みたいになって(笑い)。可愛いじゃないかと思いながら演じていました。年齢を重ね、おおらかに見えるところもあって、シンがどういう立ち位置で何を求められているかが、よく分かる。少しは器も大きくなったのかな? 少し余裕を持って演じられたところもあります」