診療や手術のサポート、カルテ入力…… 医師不足を補う存在になるか、注目の資格「医師助手」 アメリカで始まり、日本でも導入の議論が進む
だが、日本に存在しない資格であるPAにどこまでの業務を任せられるか。「そこを定義するのが難しかった」と市川さん。 PAに必要な看護師や准看護師の資格は、法律では「診療の補助」と「療養上の世話」と定義されており、その範囲を超えることはできない。院内での協議を重ね、詳細な業務範囲を少しずつ広げていった。 一方、市川さん自身にも医学的な知識や、診察に必要なスキルが不足していた。そこで、たくさんの書籍や論文を読んだり、学会などに参加したりするなど猛烈な勉強の末、医師と共通言語で会話できるレベルになった。
今では研修医や看護師などへの指導も行うようになり、PAのレベルの向上とともに、周囲からの信頼はさらに高くなっている。 ■PAの活躍で手術件数の増加 そして今やPAは、医師の働き方改革のキーパーソンでもある。 2016年に加藤医師が着任した当初、患者数を増やそうと夜遅くまで外来を開けていたため、医師やPAは夜9時頃まで働くことが常態化していた。だが今は、その頃よりも患者数は圧倒的に多いものの、終業時間の17時には仕事を終わらせている。
「そのぶん仕事が凝縮されて、走り回ることも多いですが。1つひとつの診察や治療、手術の質を担保することは絶対なので、PAが外来、手術部、看護部などのさまざまな部署に働きかけ、診療環境の拡充、次の手術の迅速な準備、病棟との情報共有を行っています。スムーズに進めようとするサポートが重要です」(加藤医師) さらに、PAの教育が進み、年間200件だった手術件数が500件に増えたタイミングで業務内容を広げた。スポーツ整形外科の専門知識を有したPAが積極的に患者さんと関わることで、不安の解消や治療上の些細な変化をキャッチすることが可能になった。
また、各部署と密なコミュニケーションを図り、「ハブ」の役割を担ったことで、同科全体は忙しくなったにもかかわらず、患者満足度と院内におけるPAの認知度が上昇するという好循環が生まれた。 それによって、スポーツ医学科は院内でも大きく収益を出す科に進化し、他科・他部門のスタッフからも注目されるようになった。さらに、看護師の新たなキャリアとしても注目されるという副産物も生み出した。 ■医師と患者、他の職種をつなぐ