新型シビックRSが、まさにホンダらしいスポーティな1台だったワケとは?
一部改良を受けたホンダ「シビック」に新しく設定された「RS」に、大谷達也が試乗した。今や希少なMTモデルの魅力に迫る。 【写真を見る】新型シビックRSの内外装など(17枚)
ほどよくスポーティ
先ごろ発売されたホンダのシビックRSが売れに売れているらしい。 ドイツ車で“RS”といえばレーシング・スポーツ、つまりサーキット向けのもっともスパルタンなモデルを意味するが、ホンダでは初代シビックにRSを設定して以来、この言葉を“ロードセーリング”の意味で用いている。つまり、ハイウェイを気持ちよく流すといったイメージだ。 同じ意味合いは新型シビックRSにも受け継がれている。なにしろ、いまのシビックにはタイプRという、サーキット走行を余裕でこなすスポーツモデルが設定されている。したがって新型シビックRSのキャラクターが、標準モデルのEXやLXとタイプRの中間に位置するスポーツ度……というあたりに落ち着いたのは、ごく自然なこと。そしてその“ほどよいスポーツ加減”が、ファンの間で広く支持されているというのだ。なにしろ、受注ベースで言うと、全シビックのうち7~8割がRSで占められているというのだから驚くしかない。 その人気の秘密は、乗ればたちどころにしてわかる。 まず、乗り心地の設定が実に絶妙で、まったく不快じゃないのに、ボディをしっかりと支えてくれるソリッドな味わいなのだ。エンジニアに聞いたところ、数値的にはサスペンション・スプリングもダンパーも標準モデルよりハードになっているそうだが、それでもゴツゴツ感は皆無。 むしろ、サスペンションの動き出しはEXやLXよりもスムーズなように感じるくらいなのだが、それでも強力なダンパーがボディをビシッとフラットに保ってくれるので、ワインディングロードでも俊敏な走りが期待できそうな雰囲気をプンプンと漂わせている。この辺は、RS専用に用意された大径ダンパーの効果が大きいと思われる。 最高出力182ps、最大トルク240Nmを生み出す1.5リッターVTECターボエンジンは基本的にEXやLXと共通だけれども、ここにもRSらしいこだわりが盛り込まれている。 エンジンには回転のバラツキを抑えるためにフライホイールと呼ばれる円盤状のパーツが組み付けられている。フライホイールを重くすれば回転はより安定するけれど、アクセルペダルを踏んだり離したりしたときのレスポンスは悪くなる。つまり、回転数の上がり方や下がり方がゆっくりになって、リズミカルなギヤチェンジの邪魔をする恐れが出てくるのだ。 そこでシビックRSではこのフライホイールの慣性モーメントを標準モデルに対して30%軽減。回転の上がり方は30%、下がり方は50%も速くなったという。おかげで最高出力は同じでも、標準モデルを圧倒するスポーティなテイストを実現したのである。 それでもシビックRSのエンジンがバラついたりしないのは、エンジン内で起きる爆発のひとつひとつを精緻に電子制御することで回転の安定性を実現したからという。こんな技術を生み出してしまったあたりからも、エンジニアたちの強い思い入れが感じられるところだ。