新型シビックRSが、まさにホンダらしいスポーティな1台だったワケとは?
誰にでも楽しめるよう工夫されている
カミソリのような切れ味のエンジンを、6速マニュアル・ギアボックスで操る快感がたまらない。とりわけ、ヒール&トーといって、シフトダウンのときに右足のつま先と踵でブレーキペダルとアクセルペダルと同時に操るテクニックを身につけた上級ドライバーであれば、素早くシフトできるそのポテンシャルをフルに引き出せるはず。 いっぽうで「ヒール&トーなんてできない!」というドライバーのために、ホンダはシフトダウン時にクルマが自動的にエンジン回転数を調整してくれる「レブマッチングシステム」を搭載。つま先とかかとでふたつのペダルを操作するなんてややこしいことをしなくても、ただシフトレバーを操作するだけでスムーズにギアチェンジができる。つまり、シャープな吹き上がりのエンジンを誰にでも楽しめるよう工夫されているのが、シビックRSなのである。 エンジンが基本的に標準モデルと同じであることは前述のとおりだけれど、改めて乗ってみると、この軽量フライホイールを積んだRS用エンジンにも魅力がたっぷり詰まっていることに気づくはず。フライホイールが軽くなったおかげで、極低回転ではちょっとトルクが細めで、昔のチューニングエンジンを思わせるような味わいなのだけれど、そこからトップエンドの6500rpmまで、リニアにパワー感を高めながらスムーズに吹き上がってくれるのだ。しかも、その吹き上がり方に、ターボエンジン特有の重ったるさはまるでなく、あたかもよくできた自然吸気エンジンのような軽快さでパワーを紡ぎ出してくれるのだからたまらない。 しかも、今も申し上げたとおりパワーがリニアに立ち上がってくれるので、パワーコントロールも実に容易。これは、ワインディングロードで限界的なドライビングをするとき、心強い味方になってくれるはずだ。 というわけで、このシビックRSは“ちょっとスポーティなシビック”というコンセプトが見事に体現できているように思えた。とりわけ、たまにワインディングロードを走る程度で、サーキットになんかいかないし、それよりも日常的な快適性のほうが大切……という層には最適な選択肢といえる。 もうひとつシビックRSで嬉しいのが、タイプRと違って大量生産する体制がすでにできあがっている点にある。凝った作りのタイプRは量産がきかないため、供給が需要に追いつかず、今も注文を受け付けていないことはよく知られている。 しかし、シビックRSであれば標準モデルと同じペースで生産できる見通しという。欲しいと思ったときに、すぐに手に入るというのは、今どき、実に重要なポイントであるはずだ。
文・大谷達也 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)