ゲイであることに悩んだ10代。性教育の授業で先生が放った一言に傷ついた…【プライド月間、LGBTQ+】
Kanさんとトムさんの結婚式での様子/©Visuals of Scotland
「自分の“好き”は周りと違うんだ」孤独に感じ、悩んだ10代
――私も含め、性的マイノリティの場合、自分は周りと少し違うかも……と気づくきっかけが人生のどこかであるかと思うのですが、Kanさんはどうでしたか? Kan 僕は中学校後半くらいのときです。それまでジェンダーに関係なく遊んでいたのが、ちょうど男女別のグループに分かれてくるような時期で、男子グループでもよく恋愛の話になっていました。異性愛が前提で、「好きな女の子は?」といった話題になり、そのときに男友達の話している「好き」と、自分自身が女の子の友達に対して感じる「好き」が違っていることに気づいて。自分は恋愛的に男の人が好きなんだなと理解しました。
――当時しんどかったのは、どんなことでしたか?
Kan 高校生になってから本格的に悩むようになり、親と親友にはカムアウトして、実際に「KanはKanだよ」と声をかけてもらったんです。ただ、当時の日本では、報道などで「LGBTQ+」といった言葉が取り上げられることがほとんどなく、どんな困難に直面するのか、どうしたら辛さを取り除けるのかなどについての情報を手にする機会が、僕自身も、そして周囲にもありませんでした。自分と同じような人やロールモデルに会う方法も分からず、ひとりぼっちに思えて、将来も見えてこず当時はとても辛かったです。高校も一度退学し、その後通信制高校を経て、大学に進学しました。
「自分らしく」生きる姿を初めて見た。カナダ留学が大きなエネルギーに
――大学時代にカナダへ留学したとき、日本とギャップを感じた点はありましたか? Kan カナダでは2005年から同性婚が合法化されていたこともあって、渡航前から性的マイノリティにとって生きやすい国なのだろうなというイメージを持っていました。想像した通り、幸せそうに、自分らしく生きる人たちの姿を初めて目の当たりにしたり、プライドパレードに参加したりしたことが、自分にとって大きなエネルギーになりました。
カナダ留学中のKanさんとお友達
――大学院進学も、カナダでの経験がきっかけになっているのでしょうか? Kan そうですね。留学から帰国後、大学の教授から僕自身の話をしてくれないか?と頼まれ、話す機会をいただいたことがきっかけ。アクティビズムに関心を持ち、僕自身もLGBTQ+のサークルを立ち上げました。ただ、そのなかで自分の経験については話せるけど、社会のなかでその経験がどんな風に位置づけられるのかが分からず、また自分以外の性的マイノリティについてもよく知らないことに気づかされ、もっと勉強したいと考えて大学院進学を決めました。学びを経た今なら分かりますが、中高生のあの頃は自分の状況を言語化できなかったことが苦しかったですね。 いま僕は勉強したり人と繋がったことで、社会の不平等も知って自分が苦しい理由を言語化できているけれど、当時(中高生時代)は混沌としていたんですよね、ただ生きづらい、みたいな。言語化ができないから、なんで苦しいかも分からない、でも僕が悪い気がするって状況でした。 ――自分を表現する言葉がないことって本当に辛いですよね。私の場合、身のまわりで「同性愛・ゲイ・レズビアン」という言葉を伏せて喋る人が多かったから、悩んでいる時にも「あ、自分は同性愛だからこう思ってるんだ」という考えになかなか気づけなかったです。 Kan そうなんです。性教育の授業で「思春期になると異性に惹かれるようになります」という教科書に載っている一文を読み上げた後に、先生が「まあそうじゃない人もいるけどね」なんて言って笑っていた状況もぐさぐさと刺さっていたし、その“ぐさぐさ”を受け入れてしまっていた。悩んでいても、人に話せず隠して「自分で自分をないことにしないといけない」というのも辛かったんじゃないかと思います。 ――Kanさんのいまのお話を聞いて、改めて「言語化できること」の大切さを強く感じました。 「プライド月間って何のため?」 「知人からカムアウトされ時どうすればいい?」 インタビュー後編では、リアルな疑問について Kanさんと一緒に考えます!まr ------------- Interview & Text:Manaho Yamamoto
講談社 ViVi