「一家に1枚」 アプリやトランプにも広がる「元素周期表」
カードゲームで遊びながら学べる
一方、「元素周期表」ポスターを企画・制作した化学同人(京都市)は、元素と素粒子が描かれたカードゲーム「えれめんトランプ」を発売している。洛星中学校・高等学校(同市)の物理教諭、田中淳さんが考案したもので、周期表ポスターと連携する形で生まれた。元素や素粒子の美しいイラストとともに、その特徴が記されている。最新の「えれめんトランプ2.0」ではニホニウムを含む全118元素を取り扱う。 場札のカードと「同じ族」か「同じ周期」のカードを順番に出し、早く手札がなくなれば勝ちとするカードゲーム「UNO」のような基本的なプレイ方法に加え、強いカードを出して勝ち抜けを競う大富豪(大貧民)ゲーム「元素富豪」など、遊びながら自然と元素や周期表に触れられると人気だ。「元素周期表」ポスターの企画者の一人でもある京都薬科大学の桜井弘名誉教授は「カードゲームで遊び、並行して周期表に親しみを覚えると、元素への興味と知識が深まってその関心が持続するようだ。もはや元素暗記法は必要ないかもしれない」と評している。
「リビングで科学の話をしてほしい」
第一弾となった「一家に1枚 周期表」ポスターは、豊田理化学研究所(愛知県長久手市)所長である京都大学の玉尾皓平名誉教授が2003年に提唱し、「美しく、かつ豊富な情報を含んだ周期表を各家庭の居間に飾り、親子で科学の話をしてほしい」との思いで発案した。それから毎年製作されてきた「一家に1枚」シリーズは計19枚となり、24年に20周年を迎える。 現在ではポスター形式だけでなく、特設サイトや解説動画が加わり、さらに英語版も公開されるなど、日本発の科学コンテンツとして世界に発信する大きな役割を担う。新しい元素の発見やノーベル賞受賞者の肖像の追加などで「元素周期表」は第13版まで改訂が重ねられてきた。サイエンスポスターに“完成”はなく、日々進化する研究に合わせて今後も塗り替えられていく。