「一家に1枚」 アプリやトランプにも広がる「元素周期表」
学習資料「一家に1枚」は2005年、「元素周期表」から始まった。身の回りの物質はすべて元素でできており、周期表は“科学の扉”を開く格好の教材となる。16年には理化学研究所のグループが発見した113番の元素が「ニホニウム」と命名され、新たに周期表に加わった。自然科学分野の日本のノーベル賞受賞者25人もポスターを彩る中で、元素周期表を基にアプリケーションやカードゲームが開発されるなど活用の幅が広がっている。
クイズ形式でインタラクティブな授業を目指す
筑波大学附属駒場中学校・高等学校(東京都世田谷区)の理科教諭で理学博士の今和泉卓也さんは、情報通信技術(ICT)を用いた探究型授業の一環として「周期表アプリケーション」を制作し、授業で活用している。2015年ごろから教育現場に電子黒板が本格的に導入されたのを機に、「これまでの延長線上ではない、ICTを使ったインタラクティブな面白い授業ができないだろうか」と考え、中学2年生が理科の授業で習う周期表を題材に選んだ。 そこで利用したのが、一家に1枚「元素周期表」ポスターだ。今和泉さんは「各元素が何に使われているのかが描かれ、子どもにもイメージしやすい」とその利点を挙げ、このポスターを「元素ごとに切り取ってカード状にすればゲームになる」と発想。各元素を一つ一つ切り出して電子黒板にランダムに表示させるなどして、元素記号の周期表上の正しい位置や手書き表記などを問うクイズ形式の授業を考案した。
生徒とともに「周期表アプリ」を作成
その後、多くの学校現場で利用できるよう、アンドロイド端末などで使える周期表アプリを生徒とともに作成し、イオンや原子核まで深く学べるコンテンツに仕上げた。現在では生徒一人一人にタブレット端末が整備されており、端末で自主学習することも可能だ。チームごとに回答タイムを競うゲームを取り入れた授業に生徒は大盛り上がりで、楽しく学んでいることが分かる。 今和泉さんは、「元素周期表は『水兵リーベ僕の船…』とただ順番に暗記するのではなく、2次元のマトリックス(表)として触れて味わってほしい。『習うより慣れよ』ではないが、ゲームを通して生徒が少しでも周期表に親しんでくれたら」との思いで、授業にさまざまな工夫を凝らす。