電源喪失は〝命のカウントダウン〟医療的ケア児と地域で災害に備える 7割の家族が「不安」、対策に自治体間で格差も #災害に備える
1923年9月1日に起きた関東大震災では、火災や建物倒壊、土砂崩れ、津波などで道路や電線が寸断され、約10万5千人が犠牲となった。100年を経て、防災対策が進んだ現在でも、ひとたび災害で電気や水道などのライフラインが止まれば、復旧には長い時間がかかる。特に人工呼吸器といった医療機器を使いながら暮らす「医療的ケア児」にとっては、電源を失う停電は命の危機に直結する一大事だ。厚生労働省の調査では、家族の7割が災害対応への不安を感じていた。国は対策整備を促すが、自治体間で格差も生まれている。(共同通信=沢田和樹) ▽豪雨による浸水で医療機器が水没し、酸素不足に 医療的ケア児は全国に約2万人いると推計されている。新生児集中治療室(NICU)などの発達により、昔は救えなかった命を日々の医療的ケアを伴いながら救えるようになり、その数は増加傾向にある。 人工呼吸器などの医療機器を動かすには、電源が必要だ。災害避難の際は他にも、移動に車いすが必要だったり、薬剤やバッテリーなど大量の荷物を運ばなければならなかったりといったハードルがある。簡単には避難することができず、厚生労働省の昨年の調査では、医療的ケア児の家族の70・9%が「容体急変や災害対応が不安」と答えていた。
国会議員や官僚、民間団体の関係者らが医療的ケア児への支援を話し合う「永田町子ども未来会議」では5月、災害対策をテーマとして取り上げた。佐賀県武雄市の小松政市長や「北海道医療的ケア児等支援センター」の土畠智幸センター長らが、過去の災害で得た教訓や、その後の対応について講演した。 佐賀県武雄市では2019年8月、約1500世帯が浸水する豪雨があり、医療的ケア児がいる家庭も被災した。医療機器は水没し、道路状況の悪さから避難所に行くまで5時間以上もかかった。電源を確保できず、たんの吸引ができなかったことで、医療的ケア児は血液中の酸素不足が原因で皮膚が青っぽく変色するチアノーゼのような状態になったという。 その後、対応を振り返る検討会では、人工呼吸器を使う別の医療的ケア児の親から「停電は命のカウントダウンだ」という訴えがあった。これらを受け、武雄市での医療的ケア児に対する災害対策が本格的に始まったという。