電源喪失は〝命のカウントダウン〟医療的ケア児と地域で災害に備える 7割の家族が「不安」、対策に自治体間で格差も #災害に備える
実際、厚生労働省は2018年度、医療機関が非常電源を購入する費用を補助し、災害時に人工呼吸器を使う患者に貸し出せるようにした。札幌市では2019年から医療的ケア児らの非常電源購入費用を補助する制度ができた。 土畠センター長が特に重要視するのは、地域で医療的ケア児を支えていく体制づくりだ。「最近はキャンプが趣味で非常電源を持っていたり、ソーラーパネルが付いていたりする家庭もある。目の前の人が『うちは電気が復旧しているからおいでよ』と言えば済む話なのに、常に医療職が手を伸ばさなければならないというのではあまり意味がない。助けが必要な子どもがいることを知らないと誰も手を伸ばせない。平時から、地域での支援を中心とするモデルに移行していくべきだ」 ▽「災害時対応ガイドブック」を作成する自治体も 他にも、国土交通省と川崎市が昨年、電動車から医療的ケア児の使う医療機器に給電する訓練をするなど、各地で災害対応は広がり始めている。
こども家庭庁は、災害時の留意点をまとめた避難マニュアル策定に乗り出す。医療機器の使用に欠かせない電源の確保や、医療従事者との連携など平時からの備えを促し、行政や保育現場での避難計画作りに役立ててもらう狙いだ。2023年末の策定を目指す。 また、2021年施行の医療的ケア児支援法は付則で、災害対応について「必要な措置を講じる」と規定している。こども家庭庁は2023年中に、全市区町村とケア児を受け入れている保育施設を対象とした調査を実施。人員確保などの事業継続計画(BCP)や避難マニュアルを作っているかどうかや、作成時の課題は何かなどを尋ねる方針だ。 茨城県つくば市はケア児らのための「災害時対応ガイドブック」を作成。(1)平時から近所の人に協力を依頼する(2)主治医や訪問看護ステーションなどの緊急時の連絡先を確認する(3)複数の予備バッテリーを準備しておく―などを呼びかけている。 他にも千葉県市川市や岐阜県、広島市などで同様のガイドブックを作っている。こども家庭庁ではこうした好事例を分析した上で避難マニュアルを作り、自治体や保育施設の避難計画作りを促したい考えだ。