電源喪失は〝命のカウントダウン〟医療的ケア児と地域で災害に備える 7割の家族が「不安」、対策に自治体間で格差も #災害に備える
▽オーダーメードの避難計画を作り、毎年訓練 小松市長は「私たちの対応のポイントは、まず本人のお宅で会議をすること。それぞれ環境が違うので、オーダーメードで避難計画を作るには本人宅で会議をするのが一番です。関係者全員が集まります」と説明した。 武雄市では豪雨の後、電源が必要な医療的ケア児3人の自宅に消防職員や看護師らと集まり、室内を確かめながら対応を検討。どうやって避難するかをまとめた個別避難計画を2020年に作った。それぞれに応じた避難訓練も毎年実施している。 小松市長は「訓練の結果、入院先には医療機器用の変換プラグがあるけど避難先にはないなど、いろんな気付きがあった。人事異動で担当者が代わるので、とにかく定期的に関係者で避難手順を確認することが大事だ」と語った。 武雄市に住む朝永渉さん(41)もオンラインで参加した。朝永さんの長女海羽さん(12)は、医療的ケア児だ。「家族の状況も行政の担当者も変わるので、関係者の方に毎年状況を知ってもらうことが大きな安心につながっている」と話した。
災害対策基本法が2021年に改正され、自力で避難することが難しい高齢者や障害者、医療的ケア児らについては、個別避難計画を作ることが自治体の努力義務となった。ただ、内閣府と消防庁の調査では、2023年1月時点で個別避難計画を全対象者について策定済みなのは9・1%、一部策定済みは65・7%だった。避難計画に基づく訓練を実施しているのは13・6%にとどまる。 朝永さんは「自治体の間で格差が出てきている。義務化をお願いしたい」と求めた。 ▽北海道地震でブラックアウトを経験、教訓は「地域での支援」 2018年9月の北海道地震では、全域が停電する「ブラックアウト」を経験した。北海道医療的ケア児等支援センターの土畠センター長は「一時避難所に避難したいと言ったら『医療職がおらず非常電源もないので対応できない』と断られた例があった」と振り返る。 土畠センター長は、電源を確保するためだけに人工呼吸器を使う患者を病院に入院させるのは現実的ではなく「非常用電源を患者の自宅や近くの訪問看護ステーションなどに配置し、災害時に活用できるようにすべきだ」と訴えてきた。