料理と酒の極め方には脱帽! 居酒屋以上割烹未満の京都の酒場がいまアツい
刺身醤油にも大野流トリックを利かせ、魚本来のおいしさを倍増
今回はアラカルトから、まずはお造りを。鹿児島産の天然カンパチと紋甲イカは、5日寝かせて旨みを乗せています。イカは軽く表面を炙り、ペーパーではなくラップで包むことで水分を飛ばさずしっとりした食感に。カンパチのムチッと弾力ある食感と噛むほどに深まる甘み、さすが5日熟成です。
実は刺身醤油にもトリックが。能登の醤油に昆布を加えて煮ることで粘りを出しているため、ちょんと少量つけるだけでも塩味を感じられる仕立てです。魚のおいしさをより楽しめるようにとの計らいからだそう。
猫田しげる「昔は魚の生臭さを消すために醤油を付けていましたが、今は流通システムの向上により新鮮なまま提供できるように。だから魚の風味を生かせる醤油を考案したのだそうです。」
お酒は辛口を合わせましょう。大野さんの日本酒愛はひとしおで、必ず蔵元に一度は行って顔を見てから取り引きするそうです。純米酒の生酒を中心に、仕入れてから1週間~10日は寝かせて味を落ち着かせるのがポイント。
いただいたのは、島根の人気酒「月山 芳醇辛口純米」のしぼりたて 無濾過生原酒。季節限定の超フレッシュな生酒で、アルコール17度ながらキレの良い口当たりでグイグイ盃が進みます。
お造りが盛られた皿と酒器も錫製の素敵な作品ですが、カウンターに重ねられた器もアンティークから現代作家のものまで多彩で、見るだけでも楽しめます。私は写真左下の鉢がダントツ気に入りました。欲しい。
“寝かせ”で素材も調味料も旨くなる。魚だけでなく肉料理も自信アリ
網の上で肉が焼かれている光景に目が釘付けになりますね。こちらは「牛ハラミの網焼き黒ニンニクソース」。しっかり下処理した肉を特製ソースに漬け込んで味を染み込ませてあります。
黒ニンニクソースは、ラム酒、バルサミコ酢、たまり醤油、赤ワイン、乾燥みかん、麹などを配合して作り、なんと1年寝かせてから使うそう。先ほどの醤油も半年寝かせています。いよっ、寝かせ王子!
猫田さん「どの調味料も、20年以上つぎ足ししていたり、1年寝かせていたりと、マメで気長で地道な手仕事の賜物。大野さんって本当にストイックだなあと感心します。」