桐生10秒01に小池10秒04。日本男子100m陣が過去最高レベルに達した理由と課題とは?
サニブラウンと小池の躍進もあり、日本代表候補の100m自己ベストは、9秒98(桐生)、9秒99(サニブラウン)、10秒00(山縣)、10秒04(小池)と4人が10秒05を切っている。間違いなく過去最高レベルに到達している。東京五輪の4×100mリレーの「金メダル」も夢ではないだろう。 大変喜ばしい状況ではあるが、あまり浮かれてばかりもいられない。世界で戦うのなら現実を直視する必要があるからだ。桐生が惜敗したガトリンは2年前のロンドン世界選手権で金メダルを獲得しているとはいえ、現在37歳。米国は若手が台頭しており、前日に行われたダイヤモンドリーグ上海大会では、21歳のノア・ライルズと23歳のクリスチャン・コールマンがともに9秒86(+0.9)の今季世界最高をマークしている。個人で戦うことを考えると、まだまだ実力不足だ。 そして今回は男子200mで日系二世の21歳、マイケル・ノーマン(米国)が驚異的な走りを見せている。自己タイ&今季世界最高となる19秒84(-0.4)で圧勝。日本人トップ(5位)に入った同じ97年生まれの山下潤(筑波大)は、0秒91という大差をつけられているのだ。ノーマンの横(アウトレーン)を走った飯塚翔太(ミズノ)も、「5歩ぐらいで横にいた。リラックスしているのに速い。初めてのタイプです」と驚いていた。また男子100mでは18歳のラルムハンマド・ゾフリ(インドネシア)が10秒03で3位に入るなど、世界には若くて、優秀なスプリンターがたくさんいる。 個人種目でファイナルに進出して、メダル争いを演じ、リレー種目では金メダルを狙う。そんな強いニッポンを本気で目指すなら、過去との比較ではなく、世界との差を常に意識することが大切だ。東京五輪では大きな夢が実現することを期待したい。 (文責・酒井政人/スポーツライター)