イタリア首相、トランプ氏と欧州の架け橋になるか
ローマ(CNN) 数年前には、イタリアが欧州で有数の安定政権を実現するとは想像もできなかった。イタリアの連立政権は1年あまり存続した後で崩壊することが多く、イタリアは予測できない国とみられていた。 【画像】政治イベントに参加した実業家のイーロン・マスク氏 しかしフランスやドイツなど比較的安定していた国の政治的な危機や、イタリアで2022年から続く極右メローニ首相率いる現連立政権の多大な人気といった一連の要因により、イタリアは、トランプ次期米大統領が2期目に入る米国と欧州の関係における重要なプレーヤーとなっている。 トランプ氏は1期目の在任中、欧州を米国の「敵」と呼んだ。今回、メローニ氏は共通の友人である米実業家イーロン・マスク氏のおかげもあって、その状況を一変させる可能性がある。 マスク氏、トランプ氏、メローニ氏は先週末、仏パリ・ノートルダム大聖堂の再開記念式典後に開かれた夕食会に参加。マクロン仏大統領をはじめとする60人が出席した夕食会後、トランプ氏はニューヨーク・ポスト紙に、この経験は前向きなものだったと語った。 トランプ氏は「私たちはとても仲がよかった」とし、メローニ氏と「多くの時間を一緒に過ごした」と付け加えた。メローニ氏については「精力的な人物」と評し、両氏が「世界を少し正す」ことができる可能性があると見立てた。 両氏は政治的に似ているが、必ずしも世界の最も緊迫した紛争のすべてで一致しているわけではない。メローニ氏は有数のウクライナ支持者で、ロシアの侵攻以来、ゼレンスキー大統領と10回以上会談を行っている。 メローニ氏がトランプ氏の行動に何らかの影響を与えることができるかどうかは分からないが、同氏がそれを欧州で最初に試みることになるとみられる。 ローマにあるルイス大学の政治科学学部の責任者ジョバンニ・オルシナ氏はCNNの取材に対し、「ドイツで新しい政権が誕生する前であり、フランスの現在の状況を考えると、トランプ氏がホワイトハウスに入ったとき、イタリアは安定した政府を持つ唯一の国として、ある種の独占状態となる」と述べた。「メローニ氏とマスク氏は現在進行形で非常に良好な関係にある。少なくとも、トランプ氏とマスク氏の蜜月が続く限り、マスク氏は両者にとって親友のような存在になれる」 マスク氏とメローニ氏は昨年の夏に強い友好関係を築いた。マスク氏は昨年12月、メローニ氏が率いる政党「イタリアの同胞(FDI)」のイベントにも出席している。 メローニ氏が、トランプ氏の「MAGA(米国を再び偉大に)」運動のエリートから好意を持たれるのはマスク氏が初めてではない。第1次トランプ政権で首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏はマスク氏以前にメローニ氏を支持する姿勢を示していた。バロン氏は18年の政治イベントに出席し、当時のCNNの取材に対して、メローニ氏が欧州で最も重要な政治家の一人となれると信じていると語っていた。 ただ、メローニ氏が22年に首相に就任して穏健化すると、バノン氏はメローニ氏から距離を置くようになり、先ごろ行われたイタリア紙の取材に対し、失望したと語った。 バロン氏は、メローニ氏のウクライナ支持と、イタリアによる貿易問題への取り組みが不足していると考えられる点を挙げ、メローニ氏がトランプ氏に影響を与えるのではなく、その逆になるとの見方を示した。 バノン氏は「トランプ大統領の登場で彼女の態度は変わると思う。トランプ氏が彼女を説得するだろう」と語る。「そして北大西洋条約機構(NATO)諸国はすぐに賛同するだろう。そうでない場合、彼女が自身の近年の発言を本当に信じているなら、欧州の他の国々と共に演説で言及しているのと同じだけの額の資金を投入し、小切手を切る用意をするべきだ。私たちMAGAの活動家は断固として議会の対ウクライナ資金提供を100%削減したいと考えている」 今のところ、メローニ氏はマスク氏、そして結果としてトランプ氏の味方のようだ。 ルイス大学のオルシナ氏はメローニ氏について、トランプ氏の欧州へのアプローチに関しては積極的ではなく受動的になる可能性が高いと指摘した。