「プーチン&金正恩」の「地獄のタッグ」と対峙する「岸田政権」があまりにお粗末過ぎてまったく期待できないワケ
日本の安全保障の2つの固有の問題
歴史的に見ると、これとよく似た相互に軍事援助を約す規定が、冷戦期の1961年に、旧ソ連と北朝鮮が締結した「友好協力相互援助条約」にも存在した。同条約の第1条で、有事の際に「直ちにその有するすべての手段をもって軍事的およびその他の援助を供与する」という規定で、当時から、朝鮮半島有事の際に旧ソ連が北朝鮮に軍事介入する根拠と解されていた。同条約は、ロシアの初代大統領となったエリツィン氏の施政下の1996年に失効していた。エリツィン体制が経済の立て直しを優先しており、北朝鮮より韓国との関係改善を重視したためとされていた。 このほか、新条約には、「戦争防止で共同の措置をとるための制度を整備する」(第8条)や、「食糧、エネルギー、サプライチェーンなど戦略的意義を持つ分野での挑戦と脅威に共同で対処する」(第9条)、「相互貿易の拡大に努力。宇宙、生物、平和的原子力、人工知能、情報技術などの分野で共同研究を奨励する」(第10条)といった規定も盛り込まれている。 問題の第4条は、西側諸国にとって、この規定を根拠にロシアがウクライナでの侵略戦争の継続に必要な兵器を北朝鮮から容易かつ大量に調達できるようになるとみられる点で大きな脅威だ。支援疲れが広がる中で、西側が何とか継続しているウクライナへの軍事支援の効果を損ねかねない要因である。 極東の緊張を高める要素も見逃せない。プーチン氏は前述の記者会見で、「軍事技術協力の発展を排除しない」と言い放っており、北朝鮮に核・ミサイル開発で必要な技術を供与して、北朝鮮の国防5か年計画の達成を加速する懸念があるのだ。 こうした中で、日本の安全保障には2つの固有の問題がある。 第一は、冒頭で記した、外為市場での足掛け3年に及ぶ急速な円安だ。 政府・与党は2022年12月の段階で、GDP(国内総生産)比でみた防衛費をこれまでの1%から2%に倍増する方針を決め、2027年度までの5年間に総額43兆円の防衛費をねん出することを決定した。 折から極東地域で安全保障環境が厳しくなっていたことに対応した措置で、防衛3文書の閣議決定と、そのための安定財源を確保するために法人税、たばこ税、所得税の3税を増税するとした2023年度与党税制改正大綱の閣議決定を伴う措置だった。 ちなみに、為替レートは2021年10月ごろからジリジリと円安が進み、閣議決定などがあった2022年12月にはすでに1ドル=130円台にあったものの、政府は円安が長続きせず、遠からず収束するとの楽観的な仮定をした。つまり、米国などからの防衛装備品の購入価格の算出にあたっての想定為替レートを2023年度調達分についてのみ1ドル=137円とし、2024年度以降の4年分の調達額は当時までの5年分の平均値である108円程度に戻るとの前提を置いていたのである。 ところが、周知の通り、円安は足もとで1ドル=160円に迫る勢いだ。この結果、為替差損が生じ、確保した予算で購入できる装備品は金額にして3割以上目減りしたとみられるのだ。 例えば、米国製のステルス戦闘機F-35A(基本タイプ)と同B(短距離離陸・垂直着陸が可能なタイプ)の購入価格は1機当たりそれぞれ116億円、160億円と見積もっていたが、足元の為替レートで計算すると、140億円と183億円に値上がりしている。ミサイル防衛に不可欠なイージス・システムを搭載した艦船の購入費は、見積もり段階の2400億円が3920億円に跳ね上がった計算というのだ。