都知事選で再注目、東京23区にふるさと納税という選択肢
東京都知事選挙が7月7日に投開票される。候補の1人である広島県安芸高田市長の石丸伸二氏は、市長在任中にふるさと納税の受け入れ額を大きく増やした実績がある(撮影:今井康一)
年々市場が拡大し、多くの人に普及した「ふるさと納税」。各自治体の特産品を返礼品としてもらえることで人気化しましたが、税金を納める自治体や、その使い道を個人が選ぶことができる制度でもあります。本連載では、ふるさと納税ポータルサイト大手「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクで長年自治体職員と付き合い、ふるさと納税市場の変化を間近で見てきた宗形深さんに、最前線の注目情報を教えてもらいます。東京都知事選挙が迫ってきた。6月20日に告示され、7月7日に投開票を迎える。 現職の小池百合子知事はまだ出馬を表明していないが、立憲民主党の蓮舫参議院議員や、広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が東京都知事選挙に立候補を表明し、話題となっている。 石丸氏は筆者が知る限り、ふるさと納税制度の賛否に対して明確なスタンスを表明していないが、2023年度の寄付額を前年比2.2倍に拡大した実績を持つ。 筆者が所属するトラストバンクは、ふるさと納税の黎明期から「ふるさとチョイス」を提供してきた。たくさんの自治体を見てきた中で、多くの寄付を集める自治体の特徴は主に3つある。スーパー自治体職員の存在、人気の地場産品、そして首長の推進力だ。とくに首長の推進力が強いと、地場産品が乏しい地域であっても多くの寄付を集めることがある。 ふるさと納税が自治体行政に影響を与えるケースも出てきている。首長選挙において、ふるさと納税の目標寄付額を公約に掲げる候補者も増えている。任期中もふるさと納税における方針発表や新たな返礼品のお披露目など、自治体にとってふるさと納税の取り組みは住民や世論への重要な情報発信の1つになっている。 石丸氏が市長を務める安芸高田市では、未来への投資として、小中学校の給食費の無償化や小学校の机・椅子の更新を重要政策と位置付けており、机と椅子の更新にかかる費用には、ふるさと納税を活用している。 国から地方自治体に交付される補助金のうち国が使途を定める、いわゆる「紐付き補助金」とは違い、ふるさと納税で集めたお金は、首長の裁量で注力したい領域に投資ができる貴重な財源である。 安芸高田市のように、ふるさと納税で集めたお金を子どもたちに集中的に投資する自治体も出てきている。首長が実績として寄付の使い道をアピールするのは、いい傾向だと言える。
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宗形深