小田和正が更新し続ける“最年長”記録 『自己ベスト-3』で再確認する言葉/メロディ/ハーモニーの黄金比
<CD Chart Focus> 参考:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2024-12-09/ 【写真】小田和正、『クリスマスの約束2024』24年の歴史に幕 2024年12月9日付(12月3日発表)のオリコン週間アルバムランキングで首位を獲得したのはHey! Say! JUMPの11作目となるアルバム『H+』で、推定売上枚数は160,257枚だった。ちなみに同作以降、同グループはサブスク及びダウンロード配信を開始したところだ。続く2位は小田和正『自己ベスト-3』で、売上枚数は51,149枚。ほか、トップ10内の初登場作品としては、4位 モーニング娘。’24『Professionals-17th』(28,802枚)、5位 Eve『Under Blue』(25,740枚)、7位 竜宮城『裏島』(15,180枚)、10位 アイナ・ジ・エンド『RUBY POP』(8,562枚)だった(すべて推定売上枚数)。 さて、今回取り上げるのは2位の小田和正『自己ベスト-3』。2007年の『自己ベスト-2』から約17年ぶりとなる最新の『自己ベスト』シリーズだ(ベストアルバムとしては、2016年にオールタイムベスト『あの日 あの時』をリリース)。本作は小田が「アルバムトップ3入り最年長アーティスト」の記録を77歳3カ月で更新した作品でもある(※1)。売上の規模から見れば、タイミング次第では「アルバム首位獲得最年長アーティスト」となる可能性も十分あっただろう。そもそも小田はオリコンチャートにおける“最年長”記録を更新してきた世代の1人。2002年にリリースされたシリーズ最初の『自己ベスト』も当時の「アルバム首位獲得最年長アーティスト」を塗り替える作品だったが、小田はその頃54歳(※2)。そこから20年以上経ってなお活発に活動を続け、かつリスナーの支持を集め続けていることは、改めて驚異的だ。 『自己ベスト-3』に収録されているレパートリーは、オフコース時代の楽曲をのちにセルフカバーした音源を含め、1980年代から2020年代まで40年を越えるスパンにわたる。平易な言葉で綴られた歌詞を明晰な発音でエモーショナルに歌い上げつつ、それでいてハーモニーとメロディが言葉と同じくらい雄弁に曲のストーリーを語る。そんな小田の音楽における言葉(歌唱)/メロディ/ハーモニーのバランスには、ある種黄金比というべき端正さがある。これだけメロディアスな楽曲が揃っても言葉が真っ直ぐ聞こえてくるところに、小田の作家性とシンガーとしての特質を改めて感じる。 リズムが前面に感じられる楽曲は、ずっしりとした八分の六拍子のビートがワイルドな雰囲気を醸す「Little Tokyo」や、ピアノ/シンセブラス/ベースが跳ねるようなリズムを奏でる「またたく星に願いを」くらいで、他の収録曲はビートをところどころ強調することはあっても、メロディの流れに重きをおいたテイストに整っている。「Little Tokyo」と「またたく星に願いを」はそれぞれ1989年、1993年が初出ということもあり、時代の空気感が刻み込まれているようにも思える(オフコース時代のセルフカバー「哀しいくらい」と「I LOVE YOU」はどちらも2000年代に再録されたアレンジの収録なので、むしろ90年代以降にいっそう洗練されていった小田のスタイルを示している)。