魔性の女歌人・和泉式部が初見参! 一方、子育てを間違えたから…? まひろ幻のデビュー作焼失【光る君へ】
朝ドラ『虎に翼』ともなんだか重なる…子育ての難しさ
そして我らが主人公まひろだが、前回小説を書き始めた時は、すわ『源氏物語』か?! と視聴者が色めき立ったが、実際は『カササギ語り』という、このドラマオリジナルの物語だった。ただ「男と女が互いの性別を入れ替える」という話は、この少し後に成立したと言われる『とりかへばや物語』に通じる。後年のヒット小説を先取りした内容だったのに、バックアップを取っていない状態で消去されてしまったのが、つくづく(フィクションとはわかっていても)もったいない。 そんな紫式部のデビュー作を、娘の賢子が燃やしてしまうというのは、なかなかショッキングな展開だった。自分が幼い頃、文字や漢詩をスルスルと覚えてしまったことから、娘も同じように育ててしまい、ストレスやプレッシャーを与えてしまうのは、ハイスペックな親だとやってしまいがちな失敗かもしれない。そういえば現在放送中の朝ドラ『虎に翼』の主人公・寅子(伊藤沙莉)も、似たようなことを娘にやってしまっていたので、こんなところで大河と朝ドラが重なるのがおもしろい。 ただ、自分が書いてきた作品が、ちょっとした過失で水泡に帰してしまうという、そのダメージたるや相当なもの。筆者も数時間かけて書いた原稿の保存をうっかり忘れて、やる気が一気に失せるという経験は幾度もしているが、まひろの場合、宣孝が亡くなった直後から3年間をかけてためてきた物語が全部消えたわけだから、この喪失感は共感をはるかに超えて、想像を絶するものがある。 ■ 予告の「いずれの御時にか…」ついに来た! ここで安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)からの「あなたを照らす光」という予言を受けて、道長がまひろに会いに来るのは、道長自身の救いになるだけでなく、まひろにとっても道長は、創作魂に再び火を付ける恩人となるのだろう。予告でまひろは「いずれの御時にか・・・」という『源氏物語』の書き出しをつぶやいたので、今度こそ時が来た! とドキドキするが、その一方で賢子と道長の初対面もあるようで・・・実は自分の娘だと気づいてしまうのか否か、こちらもドキドキが止まらなくなりそうだ。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。次週の8月11日は、パリ・オリンピックのため放送休止。8月18日放送の第31回「月の下で」では、まひろが道長からの願いと、周囲の才女たちからの影響を受けて、ついに新しい物語を記し始めるまでが描かれていく。 文/吉永美和子