ごみ焼却施設の廃熱活用 熱帯果物栽培/丸勝小野商事(青森・田舎館村)
産業廃棄物処理などを手がける丸勝小野商事(青森県田舎館村)がごみ焼却施設の廃熱を活用し、熱帯果物のチェリモヤとライチの試験栽培に乗り出した。弘前市の種苗会社や弘前大学などと連携して進めている。小野智史代表取締役は「珍しい果物の栽培を通じて地域貢献と業界のイメージアップにつなげたい」と話した。 昨年12月初旬、同村にある本社敷地内に設けたビニールハウス内にそれぞれ10本ずつ植えた。早ければチェリモヤは今年11月、ライチは2026年中に収穫できる。 チェリモヤは熱帯で栽培される果物。甘くクリーミーな食感で「森のアイスクリーム」とも呼ばれる。ライチは中国南部から東南アジアなどで広く栽培される。農林水産省の担当者によると、ともに国産の流通量は少ないという。 ハウス内は冬でも暖かく、13~35度の範囲で温度調節している。ハウス内を暖めるのは焼却施設で使う冷却水。施設を冷やす過程で70度に暖められ、施設から約120メートル離れたハウス内のボイラーに運ばれる。 果物の栽培に詳しい弘前大学藤崎農場の林田大志助教(果樹生理学)によると、日本を取り巻く近年の高温傾向で、沖縄県では熱帯果物の生育が悪くなることもあるという。林田助教は、深浦町で温泉熱を活用してチェリモヤを栽培したことがあり、「工場の廃熱や温泉熱を使えば、青森の方が品質の良いものを作れる可能性がある」と話した。 廃熱利用にはもう一つメリットがある。林田助教によると、近年のエネルギー価格高騰の影響で、ハウス栽培の経費が上がっている。廃熱や温泉熱なら、ハウス内を暖める費用を抑えられるのではと期待がかかる。苗木の調達と栽培指導を手がけた原田種苗(弘前市)の原田寿晴代表取締役は「将来的には温泉熱を活用した農業を広げたい」と語る。 今年からは、障害者の就労支援などに取り組む弘前市のNPO法人みらいと(山本昇理事長)と連携し、就農に向けた訓練の場所としても活用する予定。小野代表取締役は「ゆくゆくは村内の雇用創出にもつなげたい」と意気込んでいる。