名家の名字「嘉納」。清酒「菊正宗」醸造元で、名字の由来は南北朝時代に
名家の名字:嘉納(かのう)
神戸に名家・嘉納家があります。 嘉納家は摂津国御影村(現在の兵庫県神戸市東灘区)の酒造家で、清酒「菊正宗」醸造元です。 この家には名字の由来も伝わっており、南北朝時代に御影沢の井の水で酒を造り、これを後醍醐天皇に献上したところ、天皇が嘉納したため「嘉納」の名字を賜ったといいます。「嘉納」とは目上の人が献上された物を喜んで受け取ることです。 こうして生まれた嘉納家ですが、「本嘉納」といわれる本家は、もともとは材木屋と号して廻船業や網元などをしていました。江戸時代初期に副業として酒造りを始め、やがて中期には酒造業に専念するようになりました。 また、この頃には分家の白嘉納家も酒造業を開始し、清酒「白鶴」を世に送り出します。 嘉納家の活躍は酒造業だけではありません。講道館の創設者嘉納治五郎も一族である他、全国一の進学校として知られる灘校の創立家でもあります。 さらに、同家の創設した白鶴美術館は、国宝2件、国指定重要文化財22件を含む1300にも及ぶ文化財が収蔵されているなど、重要な美術館として知られています。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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