mikahが語る、カラフルな曲で「孤独」「寂しさ」を綴る理由
16歳の時に日本で4人組ボーイズグループ・INTERSECTIONのメンバーとしてデビューした後、ボーイズグループ・INTO1のメンバーとして中国デビューを飾ったmikah。昨年リリースした初のEP「bleached」に続き、11月に2ndEP『PRETTY LIES』をリリースする。初めてグローバルに向けて発信する曲となる先行シングル「MAYBE IT’S ME」はエレクトロポップのテイストがあり、これまでのメロウなR&Bとは大きく違うアプローチだ。歌詞には、ハワイ、日本、中国、そして現在様々な国を移動しながら日々を送るmikahが抱える圧倒的な孤独感が宿っている。 【撮り下ろし写真を見る】mikah ―「MAYBE IT’S ME」はLAで制作されたそうですが、どんな環境で作られたんでしょう? mikah:2カ月ぐらい前、LAのエイベックスのスタジオで行っていた次に出すEPの制作の中盤ぐらいにできた曲です。次のEPでは今までやっていなかったスタイルやジャンルの作品を作りたくて、ちょっとポップな曲を追求しよう思っていました。その頃いただいたトラックがちょうどこれまでとは違うエレクトロ系のポップでした。ポップではあるけれどエッジが効いているところに惹かれ、そのトラックを選びました。車でスタジオに向かう際にトラックを聞いていたらメロディが3~4パターン沸いてきて、スタジオに着いてすぐにみんなに聞かせたら「いいね」ということになり、2時間くらいで完成してしまいました。一人で内向的に曲を書くことも好きなんですが、他の人と曲を書くのも好きですね。「MAYBE IT’S ME」を共作したWill Jayとは1stEPに収録されている「so I don’t forget」を一緒に作った関係性ですが、「so I don’t forget」はすごく好きな曲なので、また一緒に曲を作ることができてすごく嬉しかった。同じタイミングで新しいEPに入る「CHASING PARADISE」という曲も作ったんですが、彼との曲は自然にフェイバリットになります。Will Jayは周りのことを見ているし、内向的なところが僕に似ている。反発せずにお互いのエネルギーがマッチしているので一緒に仕事をしてて心地がいい。だからいいアイディアが出てきます。 ―「MAYBE IT’S ME」が初めてグローバルに発信する曲であるということは意識したんですか? mikah:今はあまり商業的なことを考えて曲作りをしたくないんです。誰に向けて作るとか、そういった計算抜きで自分の好きなものを作っていきたい。キャリアの始めの方はどうしても、「どうやったらこういった層にアピールできるかな」ということを考えますが、今は完全に考えないわけではないけれど、自分のやりたいがままに実験をしていきたいという気持ちが強いです。 ―結果的にこれまでよりカラフルな楽曲になっているのは偶然だったんですね。 mikah:そうですね。「実験したい」という気持ちからいつもの自分の箱の中から脱出できたことで、過去に比べてカラフルな曲が生まれたんだと思います。でも奇抜な色を使っているわけではなくて、どちらかというと落ち着いた色を使っていると思っています。 ―「I‘ll be lonely till the day I die」という歌詞もありますが、恋愛における喪失感とはまた別の孤独感を感じました。どんな思いを込めたんでしょう? mikah:歌詞は曲を聞いてくれた人ができるだけ自分の人生にあてはめて聞いてもらいたいと思っているので、なるべくいろいろな解釈ができるよう意識しています。だからこそ、恋愛だけじゃない自分の思いを反映させています。僕は国から国へと移動しながら仕事をしていて、新しい国に行く度に人生が0からスタートする感覚になるんです。友達も作りづらく、当然寂しく思うときがあります。だからこそ、僕の曲には寂しさや、「結局頼れるのは自分なんだ」っていう気持ちが漂っていますよね。「MAYBE IT’S ME」は一層その色が打ち出されています。 ―移動しながらの生活に寂しさは感じるけれど、楽曲のインスピレーションにもなっているわけですね。 mikah:そうですね。曲を書くときはできるだけ、今この瞬間のことを捉えたいと思っていますが、思い出について書いていると、過去から過去を渡り歩くように歌詞が出てくることが多いです。新しいEPはそういう部分に強く影響されました。移動し続けることでどこにいても一種の居心地の悪さを感じると同時に、自分の心の奥と向き合うきっかけになっています。曲を作ることで自分のことをより理解できて、一種のセラピーになってるんですよね。 ―楽しい気持ちを曲にしたいとは思いませんか? mikah:(首を振る)普段超絶にハッピーな曲を聴くことはあまりないですし、ヴァイブスとしてメロウだったりチルな曲を聞くのが好きなんですよね。だから、自分が作る曲もそういう曲が多くなる。ただ、アップテンポのヒップホップも聴くので、今後もしかしたらそういう曲を書く機会が来るかもしれません。そもそも日記を綴るように曲作りを始めたので、そうなるとやはり気持ちが高揚することよりはネガティブなことを綴ることが多くなるんです。 ―「bleached」では作詞作曲に加えてクリエイティブディレクションも担っていましたが、次のEPでも担当しているんですか? mikah:そうですね。僕は商業的な業界にいるので、自分自身をフルに表現できるのはクリエイティブ面くらいだと思っています。自分の作品をトータルで探求することで自分の現在地を表現できる。新しいEPの方向性をどうするかかなり迷ったんですが、無理やりコンセプトを作りたくはなかったので、あまり気にせず曲作りを進めていきました。「CHASING PARADISE」を書いている時に、曲自体は楽園の素晴らしさについて語ってはいるんですけれども、EP全体のコンセプトとして、その反対を追求していったら面白いんじゃないかと思ったんです。「楽園は本当に美しくて完璧なの?」っていう疑問を提示する。僕はハワイ出身ですが、ハワイは楽園と言われていて、ハワイに住みたいと思っている人はたくさんいます。でも僕はどちらかというとハワイから出て大都会に住んでみたかった。楽園にも雨は降るし、影の部分があるっていうことを掘り下げEPを作りました。 ─「MAYBE IT’S ME」のMVには海でひとりで佇むmikahさんの姿がありますが、どんなイメージがあったんでしょう? Mikah:MVというと物語に沿った映像に合わせてリップシンクするようなアプローチのものが多いですよね、自分がグループで活動していた頃、そういったものを撮ってきましたし、似たようなものにはしたくなかったんです。例えばキッド・ラロイとか、自分が好きなオルタナティブなアーティストのMVのように抽象的な感じのもの──今のトレンドでもありますが、フィルムカメラの質感を活かしたようなものが作りたかった。1stEPの時もそうでしたが、ついクリエイティブを厳しい目で見てしまうのでどうしても時間がかかってしまいましたね(笑)。 <INFORMATION> 「MAYBE IT’S ME」 mikah エイベックス 配信中
Kaori Komatsu