「働き方改革」足踏みする企業まだ多く 長野でシンポ
働き方改革が論議を呼ぶ中、長野県が初の「働き方改革シンポジウム」を開きました。改革の必要性は感じながら対応できずに足踏みする企業がまだ多いことや、就労の現場では育児や家族の介護が大きな壁になっている現実も浮き彫りになりました。 【写真】会社に壊されない生き方(1) 会社に壊されるくらいなら会社をやめよう
欧州では休暇取得を義務付け
このシンポジウムは長野市で17日に開催。地元の市民らも含め200人余が参加し、勤労者、企業経営者らが現状と課題を話し合いました。 まずパリテ社会保険労務士事務所の佐藤道子氏(特定社会保険労務士、ワーク・ライフバランスコンサルタント)が基調講演し、パネルディスカッションで勤労者が働き方改革の取り組みを報告しました。 佐藤氏は「働き方改革は企業の責務」としながらも、対処の方法が分からず戸惑う企業や、認識不足で取り組み自体にマイナスイメージを持つ企業もあると指摘。一方で大手広告会社の従業員の死亡事件などが企業に強いインパクトを与えているとしました。 日本では休日出勤や残業が当たり前のこととされ、年次有給休暇は100%消化のフランスやドイツに比べ日本は半分以下の47%。長時間労働が常態化し、労働生産性はOECD加盟35カ国中20位と低いなど、労働環境の問題点を挙げました。 有給休暇の問題では、「休暇の取得を企業が従業員に義務付ける欧州に対し、日本では自己申告のため取りにくい状況が生まれている」。 残業の禁止では「計画的な残業禁止日を設ける」「上司が声をかける」「短時間で質の高い仕事をすることを評価する」「ほかの人が仕事を代替できる体制づくり」「業務時間外の会議の禁止」「長時間労働をさせた上司へのペナルティー」などが効果的とされながら、実際には職場で実行されていないことも多いという調査なども紹介しました。
なぜ改革が必要なのか?
こうした現状を踏まえて、「なぜ働き方改革が必要なのか」を説明。まず労働力人口の激減に向かい、これまでの「正社員、男性、新卒、日本人、健康な者」という労働者像や「長時間労働」「同じ条件の企業戦士をそろえる」といった構造から、「なるべく短時間で働く」「なるべく違う条件の人をそろえる」という構造の変化が迫られる。それに伴い働き方が変わる、としました。 改革の関与する分野は、強い経済の達成、育児・介護の支援、社会保障の3つに横断的にかかり、具体的には「長時間労働の是正」、「育児・介護などと仕事の両立」、「高齢者の就業促進」、「賃金引き上げ、生産性向上」、「人材育成」、「外国の人材の受け入れ問題」などが主要なテーマになってくると指摘しました。 就労現場の問題にとどまらず、「働き方改革で仕事がうまくいくことが私生活の潤いにもつながる相乗効果が強く期待される課題」と述べ、こうしたワークライフバランスが実現することで企業も地域社会も強くなるとしました。