「あの戦争は侵略戦争だ」渡辺恒雄氏が東京ドームで田原総一朗氏に語っていたこと(レビュー)
戦争を知る世代として
12月19日に亡くなった渡辺恒雄氏についての評価はさまざまだが、戦後の政治史、メディア史を語るうえで欠かせない人物であったこと、さらに貴重な証言者であったことは否定できないだろう。 4年前、渡辺氏にNHKはロングインタビューを行い、NHKスペシャルの形で放送している(BS1スペシャル「独占告白 渡辺恒雄~戦後政治はこうして作られた 昭和編~」、NHKスペシャル「渡辺恒雄 戦争と政治~戦後日本の自画像~」)。 インタビュアーを務めたのは当時まだNHKにいた大越健介氏だ。 この時のインタビューをもとにした書籍が『独占告白 渡辺恒雄 戦後政治はこうして作られた』。著者はNHKチーフ・プロデューサーの安井浩一郎氏である。 驚嘆すべきは渡辺氏の「証言者」としての能力の高さだ。記憶力、再現力ともに90歳を超えた老人とはとても思えないものがある。自身の少年時代から現在に至るまで、よどみなくエピソードを交えながら語っていく。 自民党、とりわけ中曾根康弘元首相との距離の近さから、ともすればタカ派的に見られることもあったが、戦争を嫌う気持ちは人一倍強かった。その思いを同書ではこう語っている。 「戦争責任の検証を(読売新聞で)連載までしたのは、若い人たちに、戦争を知らなかった人たちに、戦争を知らせないといかん、戦争犯罪、戦争責任は何か、このキャンペーンをやんなきゃ進まんというのが僕の気持ちだから。まあヒラ社員のときはできないわね。編集の実権握ってから『やれ』と言って、遅ればせながらやったと。もうみんな知らないんだから。戦争犯罪も知らない人が多いんだから、記者にも」(同書より) 自ら戦争を知る世代のジャーナリストとしての使命感を持っていたということか、と問われると、 「もちろん。もはや日本人にね、戦争経験を持たない人のほうが多い。戦争のことはね、書き残していかないといかんのだよ。しゃべり残し、書き残し。まだね、まだ伝え切れていない。だからちゃんと伝えないといかん。だから伝えている。僕はそのつもりだ」 戦争の体験が自身にもたらした影響については、こう語っている。 「それはね、軍の横暴、独裁政治の悪さを、身にしみて分かったわけだ」 さらに厳しい言葉が続く。 「あれだけ人を殺して、何百万人も殺して、日本中を廃墟にした連中の責任を問わなくて、いい政治ができるわけない」 渡辺氏は実際の従軍経験を持つが、8歳下のジャーナリスト、田原総一朗氏は戦時中に幼少期を過ごした経験を持つ。政治的スタンスはかなり異なるものの、戦争を嫌う気持ちや国を憂えるという大きな部分では共通するところもあったようで、二人は定期的に会い、意見を交換する機会を設けていたようだ。 田原氏が同書に寄せたレビューからは、二人の老ジャーナリストの交流の様子が垣間見える。以下、見てみよう(2023年3月16日配信記事をもとに再構成しました)。