なぜプロ野球の「外国人選手」は活躍できなくなったのか? 日米で大きく異なる「ストライクゾーン」がもたらす日本球界「ガラパゴス化」の危機
トラッキングデータ導入による変化
メジャーリーグに移籍した日本人選手が適応するのに一定の時間を要するのと同様、新外国人選手も同じ環境に置かれている。特に打者は、「200打席は与えないと実力を測れない」とも言われる。 一方、阪神、DeNA、ヤクルト、ロッテ、ソフトバンク、楽天の6球団は今季、NPB経験を持たない新外国人打者を支配下で獲得していない。その理由について「ギャンブル性が強い」と前述の某球団幹部は説明したが、言葉の裏にあるのが日米で異なる“ストライクゾーン”の存在だ。 「日本のストライクゾーンは内外角と低めが広すぎる。一方で、アメリカと違って高めはストライクにとらないからね」(前述の某球団幹部) 実際に昨季、メジャーリーグから西武にやって来たデビッド・マキノン(現在は韓国のサムスン・ライオンズ)も同じようなことを話していた。 本来、ストライクゾーンは公認野球規則(Official Baseball Rules)で明確に定められているものだ。 <打者の肩の上部とユニホームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである> それでも球審が判定する以上、ある程度の個人差はどうしても生まれるだろう。 だからこそ近年、アメリカではストライクゾーンを一定にするような施策がとられている。MLB球団のあるスカウトが説明する。 「以前はアメリカでも個々の球審の裁量に委ねられていたんです。ところがトラッキングデータ(ボールを自動追跡するカメラによるデータ)の導入が進み、テレビ中継でもストライクゾーンが白枠で画面上に示されるようになりました。枠(=ストライクゾーン)の大きさは選手の身長ごとに変わります。判定を間違えれば、今は視聴者にSNSで指摘される時代です。加えて、試合後に判定の正誤がすぐにデータで出るので、間違いが多いと球審は自分の評価を落とす。だから“正確”なストライクゾーンを間違えないように判定することが求められ、精度がものすごく高まりました」