高層ビルが「発電所」に 窓や壁に…次世代型太陽光電池の未来 省エネ&創エネを実現
太陽光電池を外壁に設置したビルは、すでに一部で普及し始めている。今後、透明な次世代型電池の研究が進めば、大阪の超高層ビル「あべのハルカス」全フロアの照明電力が自力で賄えるとの試算もあり、近い将来に「メガソーラービル」も登場する見込みだ。
太陽光電池を外壁や窓ガラスなどと一体化させた商品を手掛けるのは大成建設とカネカ。令和元年から販売を始め、横浜市にある大成建設の支店ビルなどで導入した。納入先は施工中の物件を含め数十カ所。今年4月からは大成建設以外の企業が建てる物件にも営業をかけて普及を目指す。
エネオスや同社が出資する米ユビキタスエナジーなどは、有機物を塗布した太陽光電池を開発。令和3~4年に実施した実証実験では、一定の発電量や省エネ効果を見込めたという。
各社が開発を進める太陽光電池はそれぞれ性能が異なるが、大阪大産業科学研究所の坂本雅典教授が開発した電池の発電効率は現状で1%。今後5%まで引き上げることができれば、あべのハルカスの全ての窓に設置することで、照明全ての電力に充当できるという。坂本氏は「メガソーラーに相当する発電量」と説明する。
東京電力は都内に建設中の高さ約230メートルの高層ビルの壁面に、軽くて折り曲げられる「ペロブスカイト太陽電池」を設置する計画だ。10年度に完成予定で、実現すれば世界初の「メガソーラービル」になるという。
政府は温暖化対策などとして、12年度の総発電電力量のうち、太陽光を含む再生可能エネルギーの割合を4割近くまで引き上げる方針を示す。坂本氏は「(太陽光電池の)発電効率が1%でも日本中の建物の窓に設置すれば、年間1700万トンの二酸化炭素の削減にもつながる」と述べた。(小川恵理子)