初マラソンでサブ4に挑戦、ガーミンの「睡眠コーチ」が強い味方に
はじめに 筆者はこれまで、長距離走に真剣に取り組んだことがなかった。高校時代にはクロスカントリーチームに所属していて、毎年秋にはかなりの距離を走っていたが、その目的は主にバスケットボールのための体力作りだったし、その頃の大会の距離は長くても3.1マイル(5km)で、マラソンの26.2マイル(42.195km)とは比べものにならなかった。 【写真】大会当日のスタートラインの様子 高校を卒業したあと、何度か「マラソンに挑戦してみたい」と思い立ち、数週間熱心に走り込んだこともあったのだが、結局さまざまな理由で断念してきた。そんなことを長年にわたって繰り返してきたのだが、2024年の1月1日に、ついに本気でマラソンに挑戦しようと決心した。それ以前に筆者が走った経験がある一番長い距離は8マイル(約12.9km)で、初めてのマラソンで完走しなければならない距離には程遠い状況だった。2023年には合計で50マイル(約80km)しか走っていなかったため、かなりの練習が必要になることは明らかだった。 マラソンの練習で重要なのは、ほぼ毎日走れることであり、そのためにはしっかりと体を回復させる必要がある。それにはまず睡眠が大切だ。筆者は、自分が使っていた「Garmin Forerunner 965」の睡眠トラッキング機能と睡眠コーチ機能を使うことで最大限に回復できるようにし、戦略的に練習のスケジュールを組むことで、大会の日までにできる限りの準備を整えることにした。 Garminの睡眠トラッキング機能とトレーニング 筆者は以前から長い間Garminのスマートウォッチを使っていたが、「Forerunner 965」に買い換えた頃には、そのモデルはかなり古くなっていた。この最新のForerunnerには数多くの新機能が搭載されているのだが、一番筆者の目を引いたのは睡眠関連の機能だった。古いモデルの睡眠トラッキング機能は、睡眠時間と睡眠の深さを示すステージを記録することくらいしかできず、毎晩着けて寝るほどの価値は感じられなかった。 しかし、Forerunner 965をはじめとする最近のGarmin製品は、睡眠時間とステージだけでなく、寝返りの頻度や夜間のストレス、心拍変動、呼吸も記録できるようになっている。さらにこのデバイスは、あらゆる要素を総合的に評価して「睡眠スコア」を算出し、分かりやすい「モーニングレポート」の形で提供してくれる。 睡眠スコアは、Garminが提供するもう1つの重要な指標である「トレーニングレディネス」にも大きな影響を与える。トレーニングレディネスは、行ったトレーニングの強度と量や、どれだけ体が回復したかを反映した指標で、その日のトレーニングがどれくらい効果を発揮するかを示すものだ。例えば、長時間の激しいトレーニングをした後に質の悪い睡眠しか取れなければ、翌日のトレーニングレディネスのスコアは低くなる。 こんな数字は物事を面倒にするだけだと思う人や、これが必要なのは競技に真剣に取り組んでいる選手だけだと思う人もいるかもしれない。しかし筆者は、これらのスコアがその日の練習の成果と密接に結びついていることに気付いた。 例えば、筆者の練習計画では、大会の数週間前の時期に、心身を長距離に慣らすために20マイル(32km)走る予定になっていた。そのときの睡眠スコアは95点で、筆者が経験した中でもかなり高いスコアであり、トレーニングレディネスも90点台だったのだが、その距離を狙ったペースで走り切ることができたし、走ることが気持ちいいと感じた。 また、筆者は2024年6月の初めにロサンゼルスに旅行に行ったのだが、そのときは普段家で寝るよりも睡眠の質が低かった。旅行の前には、気候が良く、標高も低いベニスビーチボードウォーク沿いやサンタモニカピアの近くを走れば気分がいいだろうと思っていたのだが(筆者は標高が約4500フィート(約1370m)で、寒くて風が強い日が多いネバダ州のリノの住んでいる)、実際に走って見ると、体が重く感じ、走ったペースと比べると普段よりも心拍数も高かった。 筆者はこうした例をいくつも経験して、質の高い睡眠は質の高いトレーニングにつながり、質の低い睡眠は質の低いトレーニングにつながるという結論に至った。 Garminには、どうすれば睡眠を改善でき、その日何時間寝るべきかをアドバイスしてくれる、睡眠コーチ機能も用意されている。自分の経験では、95%のケースでは8時間の睡眠を勧められるのだが、特に大変な練習をした日や、前日の睡眠の質が低かった場合には、それを補うために8時間半から9時間の睡眠を勧めてくることもあった。その逆に、質の高い睡眠を取った次の日には、7時間半寝れば十分だと言われることもある。 睡眠スコアに影響する要因 幸い筆者は、マラソンの練習に合わせて睡眠パターンを大きく変える必要はなかったのだが、すぐにどのような行動が自分の睡眠スコアや練習にマイナスになり、何がプラスになるかを理解することができた。 当然ではあるのだろうが、少しでもアルコールを摂取すると睡眠スコアは大幅に低下した。このスマートウォッチを着け始めてから一番低かったスコアは100点中35点だったのだが、これはバーで一晩過ごした次の日のことだった。筆者はもともと頻繁に飲む方ではなかったのだが、練習の質を上げるために、アルコールを飲むことはほとんどなくなった。 また、就寝前に20分から30分読書することも、睡眠スコアの改善に役立った。Garminの睡眠コーチは、眠りにつく前にメディテーションや深呼吸などのストレスを軽減する活動を行うことを勧めている。筆者はメディテーションをうまくできたことがないのだが、読書にはそれと同じような心と体を落ち着かせる効果があるようだ。 また、今年はエアコンが使えなかった期間が数週間あったのだが、その間、ほとんどの日は室温が華氏88度(摂氏約31度)以上になった。手に入る中では最高の冷感マットレスで寝ていたにもかかわらず、その暑さは睡眠の質を大きく下げ、練習にも悪影響があった。 しかし、一番重要だったのは、単純に毎日ほぼ同じ時間に寝て、同じ時間に起き、8時間の睡眠を取ることだった。8時間寝られない日があっても次の日の練習にはそれほど影響はなかったのだが、何日か続けて睡眠時間が8時間を下回ると影響を感じ始めることが分かった。 練習プランの調整 トレーニングレディネスや睡眠スコアが低かったからと言って、その日の練習を取りやめるわけではない。これは、マラソンの練習で重要なポイントの1つが、体力的に辛い日でも走れる強靱な精神を養うことだからだ。 しかし、Garminの睡眠トラッキングツールが提供してくれる情報を利用して、その日の体調には厳しすぎる練習が予定されていた場合には、それを次の日のもっと楽な練習と入れ替えたりはした。厳しい練習の日に体を重く感じたり、自分が遅いと感じると、進歩が感じられなくなるため、このようなスケジュールの調整はやる気を維持するのに役立った。また筆者は、大きな怪我もせずに数カ月間の練習と数百マイル(正確には732マイル、1180km)の走り込みをやり通すことができたのには、睡眠の状態に応じてスケジュールを調整していたことが一役買っていたと考えている。 大会当日の様子 サンフランシスコマラソンを選んだのは、自分の町から一番近いところで開催されるフルマラソンだったからだ。この大会の開催日がたまたま自分の誕生日だったため、何か運命的なものを感じたということもある。 その日はシャトルバスに乗って朝4時半にスタートラインに着かなくてはならず、大会そのものは5時15分に始まった。前夜の睡眠スコアはまずまずだったが(71点だった)、睡眠時間は8時間には遠く及ばなかった。しかし幸い、スタートラインに立ったときにはそれを補うだけのアドレナリンが出ていた。 筆者は4時間以内のゴールを目指して練習していたが、これはアマチュアランナーにとってはよくある目標であり、世界平均の完走タイムよりも約30分速い記録だ。 サンフランシスコマラソンのコースは非常に険しい。この街は坂が多いことで有名で、コースにも多くの坂が含まれているのだ。42.195kmのコースに合計1700フィート(約520m)の高低差があるのだが、この数字はボストンマラソンやニューヨークマラソンよりもはるかに大きい。 最初の8マイル(約13km)は気持ちよく走ることができ、筆者は序盤に無理をしすぎないように、この区間は意図的にペースを落としていた。それは非常にいい判断だった。9マイル(14.5km)付近に、ゴールデンゲートブリッジまで続く最初の大きな坂があったからだ。それは非常に急な坂だったが、ほかの数百人の選手と一緒にあの橋を渡ったのは、ほかでは絶対に得られない経験だった。 ゴールデンゲートブリッジの北側に戻るための坂はさらに険しく、ペースメーカーの集団について行くのが大変だった。しかしその橋を渡り終えて戻ってくると、コースの半分が過ぎていた。 残る半分は、急坂は少なかったにもかかわらずさらに大変だった。その頃にはアドレナリンの効果はほとんどなくなっており、疲れと睡眠不足の影響が出ているのを感じ始めた。 20マイル(約32.2km)を超えると、筆者には完全に未体験の状況に突入したが、ギリギリのところで自分が予定していたペースを維持することができた。この区間は街の中心を通るようになっており、大勢の観客から声援をもらったことも、少し筆者の背中を押してくれた。 ところが、残り1マイル(約1.6km)を切ったところで歩道の亀裂に足を取られそうになり、つま先をコンクリートに打ち付けてしまった。激痛を感じ、足の爪が剥がれたのかと思っただが(後になって水ぶくれが破れたのだと判明した)、なんとか力を振り絞ってゴールまでたどり着いた。最終的なタイムは3時間58分24秒で、目標タイムをギリギリのところで達成したことになる。 筆者は5694人のランナーのうち1580番目の完走者で、30~34歳の男子で上位約3割に入ることができた。このような難コースで臨んだ初めての大会としては、素晴らしい結果だったと考えている。 大会後のリカバリー 筆者は、医療テントで外反母趾に異常がないことを確認した後、Airbnbで取った宿に戻るため、慎重な足取りで電車の駅に向かった。その後、勝利のビールとピザ(丸ごと1枚だ)を満喫したが、午後の遅い時間には、予想通りすっかりへとへとになっていた。 ベッドに入ったのは午後9時30分頃だったが、Garminによれば、実際に眠りに落ちたのは午後9時56分だった。普段の寝る前のルーチンをこなす元気は残っていなかった。その日は10時間近く眠ったのだが、夜間のストレスレベルが高かったため、睡眠スコアは65点しかなかった。 これはおそらく、筆者の体が多くのことを経験したためだろう。ストレスチャートによれば、睡眠の前半はストレスが高く、時間が経つにつれてストレスレベルが急激に下がっていた。その翌日の睡眠スコアとストレスレベルは普段の水準に戻った。 最後に 走る競技やその他のスポーツの回復手段についての話になると、ストレッチやヨガ、フォームローラー、サプリメントなどの手段に目が行きがちだ。もちろんこれらも重要な役割を果たせるだろうし、効果もあるのだろうが、回復に一番重要なのは質の高い睡眠であることを忘れてはならない。筆者は、睡眠トラッキングツールがなくてもマラソンで目標を達成できただろうか?おそらくできただろうが、自分はそれをしなくて幸いだったと思っている。睡眠トラッキング技術は極めて有用で、筆者はGarminのForerunner 965に買い換えて、新しい睡眠トラッキングツールや睡眠コーチングツールを使い始めてから、初めて自分の練習がうまく行き始めたように感じた。 筆者は睡眠スコアやトレーニングレディネスのスコアをチェックしていたが、頻繁に練習スケジュールを変更していたわけではない。変更したこともあったし、それは有効だったが、それよりも重要だったのは、ライフスタイルを変えて睡眠の質を上げることによって、練習の効果を最大限に高めることだった。睡眠の質と練習効率が密接に関係していたからだ。 もし皆さんがマラソンやトライアスロンの練習をしていたり、真剣にジムの日課に取り組もうとしていたりするなら、ぜひ何らかの睡眠トラッカーを使ってみてほしい。最近のGarminのスマートウォッチでは、たいていの場合睡眠トラッキング機能が利用でき、これには安価な「Forerunner 165」も含まれている。 筆者は、今後の大会に向けた練習のために、これからも毎晩Garminを着けて寝るつもりだ。 (この記事に含まれる情報は、教育および情報提供のみを目的としたものであり、健康や医療に関するアドバイスを意図したものではありません。健康状態や健康の目標について疑問がある場合は、必ず医師など有資格の医療従事者に相談してください) この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。