浅井健一が語る、人生で一番大事なもの、社会や経済を批評的に考える重要さ
怖いからとにかく絶対に何がなんでも反対だーっ、てなるのは良くない
─そうした世の中の状況に対して訴えている曲は、「Stealth」「Very War」「ぐっさり」もありますけど、「Fantasy」はさらに具体的ですよね。苦しい状況を変えるためには、自分たちが声を上げなければいけないとか考えなければいけない、というメッセージにも感じる。それと同時に、そういうことを歌うアーティストってほとんどいないよなって思います。 浅井:うん、いないよね。 ─なんでいなんですかね? 浅井:まあ、平和ボケかな。いるにはいるよ。すごく極端だったりとか、そういう人はいるんだけど、そういうところを発信するのは大事だと思うしミュージシャンの一つの価値。だから頑張りました。 ─浅井さんは歌の中だけで伝えているわけじゃなくて、例えばラジオ「浅井健一のNight Chocolate」でも発信されていますよね。 浅井:うん、すごい聴いてくれてるね! ─歌を通して初めて言ったとかじゃなくて、日頃から言ってることと音楽の歌っていることが一貫していますよね。 浅井:歌うときだけかっこいい言葉を持ってくるようなことは全然やりたくない。ロックバンドというか、ミュージシャンはやっぱり状況に鋭くないといかんから。この曲がラジオで流れたら嬉しいよね。それだけかな。 ─以前、AJICOとして「Rolling Stone Japan」のインタビューに登場されたとき、「我々人類は大昔から、あらゆる進歩を遂げてきました。化学が進歩して、いっろーんな物が発明されていって、領土の奪い合い、富の奪い合いで数えきれない殺し合いがあり。核が発明され、遺伝子組み換えとかが行われるようになり。雨さえも人工的に降らせたり、AIなんかに歓喜したり。神の領域にまで手をのばしちゃって。そんなの絶対にだめでしょって、科学者とか絶対にわかってるくせに踏みとどまるなんてこと、できないでしょう絶対に。いつか必ずしっぺ返しがくる」と言っていましたね。 浅井:うんうん。だからみんなで祭りをやって踊っているぐらいがいいのに、もうとんでもないところまで行ってるよね。そりゃあ止めれんわ。 ─このまま進んだら、世の中はどうなっていくと思いますか? 浅井:昔から言われてるけど、「破滅しかない」ってよくみんな言うよね。なんか結局破滅しちゃうから。今暑いじゃん、来年はもっと暑くなったりして、もう外を歩けなくなっちゃうとかになったら、アラスカとかニュージーランドとか、あそこら辺に移住するといいらしいよ。でも、そんなことはしたくないじゃん。それを止めるために、めちゃくちゃ問題になってるのが、ヨーロッパの方で車の前に座り込んじゃってさ。アレもめちゃくちゃだもんね。だから、まさに世界がめちゃくちゃになりつつある。だから、この場で何を俺たちが言うかだよね。 ─そうですよね。 浅井:今、どストレートに自分が言いたい、喋りたい世界のことを振ってくれてるんだけど、逆に何も出てこないの。 ─大きな質問ですよね。 浅井:例えば中国は台湾を侵攻すると思う? ─いや、うーん……。 浅井:(無言で見つめる)。 ─……正直わからないです。 浅井:まあ、分からんことは分からんけど。原発はどう思う? 俺はね、推進派とか反対派とかは言わないけど、結局今日本人の生活が苦しいっていうか、「賃金が上がらなくて大変、よその国では上がってるのに」とか「電気代とかも上がって、いろんな物価も上がって大変だ」なんていう言葉をたまに目にするんですが。そりゃそうだと思うよ。原発止めて、タッカイ石油買って発電してるんだから。政治が悪いからって言う人もいるけど、一番大きなのは前者だと思いますね。企業からしたら鎖を引きずってよその国の製品と戦ってるって感じだと思うし。だから原発に反対する人はこの状況がいつまでも続く覚悟がいると思いますね。より悪化するかも。 ─2011年に起きた東電福島第一原発事故を機に、日本は安全性に対する懸念が大きくなりましたよね。 浅井:自分が思うのは、回すも回さないも、ちゃんと世界全体でどういう状況なのかをわかってから意思を決めるべきであって。怖いからとにかく絶対に何がなんでも反対だーっ、てなるのは良くないと思うんだわ。整理すると、反対の理由として自分が想像するには、放射能漏れが怖い。もし『チャイナ・シンドローム』(※1979年に公開された映画で、ジェーン・フォンダとジャック・レモンが主演を務めた)のようなことが起きたら、日本に住めなくなっちゃうから、だと思う。本当に自分もそうだと思うし。それ以外には思いつかないんだけど。あるとしたら、日本を弱体化を願っている他国のごく一部の人が反対派の人たちに紛れてあらゆる場面で焚きつけてる気がしてますね。稼動すべきだ、の理由としては。やっぱり原発を回せば電気代も下がるし、ほとんどの企業が潤い、多くの人の給料も上がり生活が豊かになるような気がする、で、笑顔が増えて犯罪も減る。国家間の競争にもすべての企業が対等なスタートラインに立てる。と思うな。でも危険が常につきまとう。っていうね。 ─生活が苦しくなっている原因は何か? そして、良くするためには何をすることが大事かを理解すると。 浅井:冷静に眺めないとね。ここで基本的なことを聞くけど、ある方が言ってたんですけど、原発って、止めていた方が安全なのか? 動いていた方が安全なのか? どっち? たとえ止めていたにせよ、常に冷却は必要なんだよね。その装置が作動しなくなったら一大事なわけで。大地震が起きたり台風で送電できなくなったりしたらアウトでしょ。詳しくは調べてないんだけど。ひょっとして稼動していようが止まっていようが、どっちみち危険度はほとんど変わらなかったりするのかな? だったら。もしもそうなら回した方がいい気がするんですが。そこら辺を知っている方がおられましたらぜひ知りたいです。因みに、九州全体的で景気がいいんだって。なんでかっていうと、原発が回ってるかじゃないのかな。だから強いの、九州は。 ─ちゃんと結果が出ていると。 浅井:あからさまなんだよね、そこら辺をもっと知ってほしいかな。「とにかく原発はダメだ」と叫んどる人がいるでしょ。無しなら無しでもいいんだけど、みんなでどんどん生活が苦しくなっていっちゃうよ。犯罪も増えるだろうし、いいことがますます減ってっちゃうんじゃないのか。っていう心配。