片目を隠した女性集団のシュプレヒコールに伴走…独裁政権から亡命した83歳の映画監督が「距離」があるからこそ撮れた「チリの姿」
民衆や社会を動かす鍵
――運動はやがて2021年、世界で最も若い、かつ左派勢力である36歳のガブリエル・ボリッチが大統領選挙に勝利することによって結実します。ひるがえってここ日本では、いわゆる社会運動は存在しますが、それは大規模な動きには至らず、政権転覆のような大きな結末になることはあまり望めません。もちろん、その国の個別の事情にも配慮する必要はあると思うのですが、民衆や社会を動かす鍵となるものは何か、監督の考えをお聞かせいただけますか。 いまあなたがおっしゃられたように、社会運動は国ごとに背景も多様なので、その鍵となるものを断定することは難しいですね。ブラジルやペルーなども含めたラテンアメリカでは、歴史的にさまざまな社会運動が生まれてきていて、かつそれらに横たわる思想は何らかの線でつながったりもするので、そういう基盤があることは大きいと思います。ヨーロッパでも、たとえばイギリスやフランスでは同じ傾向が指摘できるでしょう。 ただ繰り返しになりますが、社会運動が生まれる背景は国ごとに異なるので、安易な断定はあまりできません。普遍的な要素について考えるよりは、なぜ起きるのか、なぜ起きないのかという理由を、個別の国の個別の事情から、じっくりと考えていくことが必要なのではないかと思っています。 ●12月20日(金)~アップリンク吉祥寺、12/21(土)~新宿K's cinemaほか全国順次公開
若林 良(映画評論家・ライター)
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