「何を言い出す」役員会にもかけられた高橋名人の後悔「ゲームは1日1時間」発言はもっと早くすべきだった
「うまくなりたいのはわかる。でも、1日中はプレイしてほしくない」、ゲームソフトのメーカーに籍を置く高橋名人は苦悩しながら、「ゲームは1日1時間」と子どもたちに語りかけました。この声はいま、スマホやタブレットに時間を忙殺される子どもにも当てはまるかもしれません。(全4回中の2回) 【画像】業界騒然!ゲームマニュアルに書かれた衝撃の一文 ほか(全13枚)
■「ゲームは1時間」名人の言葉に業界も猛反発 ──「16連射」で大ブームを巻き起こした高橋名人。ハドソンの販促をしながら、「名人」として全国をまわりながら考えたことを教えてください。ブームの盛り上がりにともない、ファミコンを苦い目で見る親も増えてきたのでは?
高橋名人:ゲームと子どもたちについては、ずっと考え続けていました。 ファミコン以前、インベーダーゲームができるインベーダーハウス(現在のゲームセンター)が全国に乱立しましたが、薄暗い店内、不良の溜まり場というイメージの悪さのため、PTAから小中学生は立ち入り禁止にされました。 そんな中、小中学生がそれまで自由にできなかったゲームがファミコンによって、家庭でできるようになり、時間を忘れて熱中しました。
ただ、親御さんにとってゲームは「勉強の敵」なので、なんとかいい方向に持っていかないといけない。問題になる前に、企業として何か対応を打ち出さないとまずい、ということになりました。 ──「ソフトを売ればいい」ではなく、子どもたちへの影響を長期的な視野でとらえていたのですね。 高橋名人:はい。ただ、やはりゲーム業界を盛り上げなければいけないところもあり、難しかったです。 全国キャラバン1年目の1985年、鹿児島から始まり、福岡県のダイエーでのイベントではゲーム大会参加者以外の観客数も一気に増えました。そこで、いまこそ思いきって何か言わなきゃと、「ゲームは1日1時間に」と語りかけたんです。
ただ、時間で区切ってゲームをやめよう、と言っても子どもは聞いてくれないので、工夫しました。 「みんな、ゲーム上手くなりたいだろう。それには、頭がシャキッとさえているときに30分、1時間だけ集中して上手いプレイを記憶するのがいい」と伝えました。「長くダラダラとプレイしても、下手なプレイしか記憶できないから上達しないよ」とも言いました。 ── 集中力は大切ですね。でも、ゲーム会社でゲームを売る人がそんなことを言い出すなんてと、驚かれませんでしたか?