意外とわからない、雲はどうやってできているのか?…じつは一連のプロセスには熱力学的な物理現象が満載!
熱力学第一法則
ここで登場するのが熱力学第一法則だ。 式だけ見ても、ピンとこないだろうが、要は、熱力学第一法則は、 ---------- エネルギー=物体が得る熱+物体がされる仕事 ---------- という関係が成り立つことを示している。熱と仕事は同じものであり、「熱から仕事へ」、「仕事から熱へ」変換することができ、その間においてはエネルギーが保存される。 雲ができあがるプロセスに照らしてみると、大気塊が上昇する間、外から加えられる熱はないので、大気塊がする仕事(W)は、大気塊から奪われる熱(Q)で代償されなくてはならない。すなわち、膨張するという仕事に相当する熱が失われることになる。そして熱を失った大気塊の温度は結果的に下がる(加熱されて温度が下がる物質、冷却されて温度が上がる物質は存在しない)。 そして、大気塊の温度が下がると、飽和水蒸気圧も下がるので、水蒸気は、大気中の塵を核に水滴や氷の粒となり雲となる。そして、大気塊がさらに上昇するにつれて、こうした水滴や氷の粒は徐々に大きく、そして重くなり、大気塊を作り出した上昇気流では支えられなくなり、雲から地上へ向かって落下を始める。 「雲ができて、雨が降る」というたったそれだけのプロセスもこれだけの物理法則が関わっているのである。 * 【つづき】〈なんと「雲と霧」、気象学的には「同じもの」なのに、その「発生プロセス」は全然違っていた! 〉では、霧はなぜできるのか、くわしくみていきます。
田口 善弘(中央大学理工学部教授)