意外とわからない、雲はどうやってできているのか?…じつは一連のプロセスには熱力学的な物理現象が満載!
熱力学第二法則
先ほど、「こうした水蒸気を多く含んだ空気の塊が、太陽光によって暖められた地表からの熱によって上昇」と、さも当たり前のように説明したが、これができるのは、私たちの住む世界が、熱力学の根本法則で支配されているからにほかならない。 もしこれから説明する熱力学第一法則や熱力学第二法則が通用しない世界だったら、南極や北極などの極地に、突如として灼熱の熱球が現れるような、奇妙奇天烈なことが起きてしまう。 最初に、熱力学の根本法則のひとつである「熱力学第二法則」から説明しよう。 熱は温度の高いほうから低いほうにしか移動しない (逆はない! ) 熱力学の根本法則というわりに、なんだか当たり前のことを言っているように思われるかもしれないが、この当然のことが当然に起こることがたいせつなのだ。熱力学第二法則が成り立たない世界では、太陽熱で40℃に暖められた地表に、-5℃の大気から熱がどんどん移動して、数千℃になるなんて、超常現象が起きる。しかし、現実世界では、低温から高温への熱の移動は絶対に起きない。 これに反する「逆の変化」を起こすためには外からエネルギーを与えなければならない。熱力学第二法則が成り立つ世界だからこそ、大地に暖められた大気塊から雲が生まれ、雨が降るという、太古から繰り返されてきた自然現象が滞りなく進むのである(熱力学第二法則については、Chapter18で別の角度から改めて論じたい)。
シャルルの法則
「圧力が一定の場合、体積は温度に比例する」 1787年に、フランスのシャルルが発見した、お馴染みシャルルの法則である。「圧力が同じならば、すべての気体は温度が1℃上昇するごとに、0℃の体積の一定割合だけ体積を増加する」という気体に関する基本的法則だ。 雲の発生では、このシャルルの法則が重要な役割を果たしている。地表面付近の大気圧は1気圧で一定のため、大地から伝わった熱で大気塊(空気の塊のこと)の温度が上昇しても、圧力は変わらない。 一方で、シャルルの法則で、温度上昇により大気は膨張する。膨張した大気塊の密度は下がって軽くなるので、大気塊はぐんぐんと上昇を始める。 上空は大気圧が低いため、大気塊の圧力は周囲の大気の圧力と同じにならねばならず、圧力を下げなくてはならない。結果、大気塊は周囲の大気を押しのけて膨張して圧力を下げるために仕事をしなくてはならず、その仕事を捻出するために熱を失うしかない。