世界初・輪切りレモン入れた缶チューハイ…「フルオープン」へのミッションから誕生、想定外の”浮き上がり”も魅力に
挿入の機械2年がかりで一から開発
開発は困難を極めた。 まず、量産に耐えうるレモンをどう確保し、品質を保つか。「日本は特に安全・安心への意識が高い」(余田)ことから、収穫後のレモンに薬剤や保存料を使わないことは譲れなかった。世界有数の産地である中国・四川省で、厳しい注文に応えられる農園を探し出した。 生の果実を入れると微生物が発生するリスクもある。発生を防ぐため、現地の工場にレモンを乾燥させる専用設備を導入した。品質保証や設備の担当者が1~2か月近く中国に張り付き、供給体制を整えた。 缶への固形物の封入も初の試みだ。レモンを装入する機械は一から開発した。缶がへこんだり、レモンがうまく入らなかったりと失敗を重ねながら、2年がかりで1分で600缶に封入できるまで精度を高めた。 開発期間は通常の缶チューハイの2倍以上の約3年半、携わった人員は過去に例のない延べ約80人に上った。 今年6月に首都圏などで先行発売すると、1週間足らずで店頭から商品が消える小売店が相次いだ。販売エリアのRTD市場は前期比4%増ほどで推移していたが、未来のレモンサワーの発売週は34%増と急増した。 余田は「ライバルから顧客を奪ったというよりは、ふだんあまり酒を飲まない人やビールを飲む人を市場に呼び込んだ。酒類市場の活性化に貢献できたのではないか」と、存在感の高まりをかみしめている。(敬称略)
<会社ナビ>アサヒビール…ノンアル飲料も拡充
アサヒグループホールディングス(GHD)の中核子会社で、酒類を販売する。1987年発売の主力ブランド「アサヒスーパードライ」を始め、ニッカウヰスキーや焼酎「かのか」を販売する。酒を飲まない人も楽しめる「スマートドリンキング」を宣言し、ノンアルコール飲料も拡充している。アサヒGHDの2023年12月期の連結売上収益は2兆7690億円、国内酒類事業は8113億円。アサヒビール単体の従業員数は2865人(23年末)。本社は東京都墨田区。