世界初・輪切りレモン入れた缶チューハイ…「フルオープン」へのミッションから誕生、想定外の”浮き上がり”も魅力に
「未来のレモンサワー」
アサヒビールの「未来のレモンサワー」は、世界で初めて本物のレモンを入れた缶チューハイだ。フタを開けるとレモンが浮き上がるという見た目の面白さも相まって、ふだん缶チューハイを飲まない層を市場に呼び込んだ。6月の首都圏などに続き、今月、関西と東海、北陸でも販売が始まった。(都築建) 【画像】「未来のレモンサワー」の開発に当たったアサヒビールの山田佑さん(右)と余田憲亮さん(4日、東京都墨田区で)=杉本昌大撮影
「パカーン」と缶のフタを開けると、厚さ約5ミリの輪切りのレモンが浮かび上がる。レモンは、収穫後に防カビ剤などを散布しない「ポストハーベストフリー」の“本物”で、取り出してそのまま食べられる。味覚だけでなく、視覚や聴覚など五感で楽しめる新感覚の缶チューハイとして、市場に新風を吹き込んだ。
開発が始まったのは2021年初頭。新ブランド開発部の山田佑(38)らに「この缶を他の製品に展開できないか」とのミッションが下された。
この缶とは、上面が全開する「フルオープン缶」。ジョッキで飲む生ビールのおいしさを、缶でも実現しようと開発されたものだ。
飲み口が広いので、ごくごくのどに流し込むことができて、香りも味わえる。21年春に発売された「スーパードライ生ジョッキ缶」は、大ヒット商品になった。
理想のサワー、いける
「フタが全開する、この缶だったら、入れられるんじゃないか」 開発の方向性は程なく固まった。目を付けたのは、グラスに果物を入れて提供する居酒屋のレモンサワー。事前のマーケティング調査で、大半が「理想のサワー」に挙げていた。
果実感を前面に打ち出す商品はあるが、実際に果物が入った缶チューハイは例がない。試しに、市販のレモンを入れたところ、予期せぬ現象が起こった。開封時にレモンが浮き上がってきたのだ。山田は「メンバー全員が大いに沸いた。消費者に驚きやワクワク感をお届けできる」と手応えを感じた。
ビール市場のシェア(占有率)でトップを争うアサヒだが、缶チューハイなど「RTD」市場のシェアは高くない。市場で存在感を高める商品の開発は長年の課題だった。RTDマーケティング部の余田憲亮(33)は、「缶チューハイのパラダイムシフト(転換)を起こす商品になる」と自信を深めつつ、こうも思った。「これ、本当にできるのか」