実はラーメンは「栄養満点の食事」だった…がんで死ぬ国・日本の中高年にとって重要な“あるもの”が摂取できるラーメンのすすめ
「体のために」嫌いなものを食べる必要なし
「野菜が嫌い」だという人は、ジュースが飲めるならジュースで摂ればいいし、それも嫌ならサプリで補えばいい。これが私の考える「足し算健康法」です。ビタミン類のほか、食物繊維が含まれるものや、体内で抗酸化物質として働くβカロテン(ビタミンA)、亜鉛、セレンなどのミネラルを選ぶといいでしょう。 なかでも亜鉛は、体内で多くの酵素の組成に関わる重要な物質で、男性ホルモンであるテストステロンの合成に関わる酵素にも関与するため、男性ホルモンを増やすうえでは必須の栄養素です。さらには神経伝達物質の合成にも必要なので、亜鉛不足が続くとイライラや記憶力の低下を招きます。代謝や免疫機能にも重要な役割を果たし、欠乏すると味覚を感じなくなるなどの弊害が現れます。 納豆が嫌いな人は、ナットウキナーゼのサプリを選ぶこともできます。納豆に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」には血栓を溶かし、血液をサラサラにする効果があるので、脳梗塞の予防にも効くとされますが、自分は好きではないので納豆は食べません。(私はもともと血液がサラサラ過ぎて出血が止まりにくい体質のため、摂る必要性があまりないという理由もありますが) 自分が食べたいものを食べることで必要な栄養素が不足するなら、それはサプリなどで「足し算」をすればよく、嫌いな食べ物を、「体のために」と我慢して食べる必要はないと考えています。
肉と魚を多く食べる重要性
肉食の習慣がある地域ではコレステロール値が高い人が多く、そのため心筋梗塞になる確率が高いといわれてきましたが、必ずしもそうではないことが最近の研究でわかっています。 欧米の多くの国々では人口10万人あたり150~200人ほどの男性が心筋梗塞で死亡していますが、フランスやイタリア、スペインなどの南欧の国々は、同じくらいのカロリーを摂っていても心筋梗塞による死亡率が10万人あたり100人以下と目立って少ない傾向があります。さらに低いのが日本と韓国で、同50人以下です。 南欧諸国と日本・韓国に共通するのが、肉とともに魚介類を多く食べる食習慣があることです。そうした事実から、魚に含まれる脂の一種「DHA(ドコサヘキサエン酸)」が注目されました。DHAが日常的に摂取するサプリとして普及した結果、米国では心筋梗塞が激減したのです。 日本人はサプリなどを取り入れて栄養補給をすることを、あたかも「反則」のようにとらえる風潮が根強くありますが、まったくのナンセンスと言えるでしょう。 なお、日本人が肉や魚でタンパク質や脂肪を摂ることのメリットは、高齢になればなるほど高くなります。 ずっと日本人の死因第1位だった「脳卒中」が減ったのは、「血圧の薬」と「減塩運動」のおかげだと思っている人が多いようですが、それだけではないはずです。昭和30年代から40年代を振り返ると、脳卒中で倒れた人の多くは、血圧140~150程度で血管が破れていました。当時の日本人の栄養状況が今と違い、タンパク質の摂取量が十分ではなかったため、血管がもろく、血圧150程度にも耐えられなかったからです。 現在、血圧が200を超えていたとしても、血管が破れるケースは稀です。現在も死因の上位に脳血管疾患がありますが、その内訳を見ると血管が詰まる「脳梗塞」が圧倒的に多く、血管が破れる「脳卒中」はそれに比べて圧倒的に少ないことがわかります。 同様に、コレステロールも男性ホルモンの材料になり、免疫細胞の材料にもなるので、高齢になるほど意識して摂取する必要があります。「がんで死ぬ国」である日本では、コレステロールの摂取がより重要と言えるかもしれません。 たとえば、お店で食べるラーメンのスープには動物性の食材のほかに野菜など数十種類の食材が使われています。もはや日本人の国民食であるにもかかわらず、「健康のための食事制限」の信奉者からは「塩分や脂肪分が多い」と白眼視されることの多いラーメンですが、実は「栄養満点の食事」と言うことができるのです。 自分が美味しいと感じる食べ物を無理して我慢せず、足りない栄養素はサプリで補うなどの工夫により、バランスのとれた食生活を実践することは、十分可能なはずです。そのほうが、心身ともに幸せを感じてより健康になれるのではないでしょうか。 写真/shutterstock ---------- 和田秀樹(わだ ひでき) 精神科医 1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、浴風会病院精神科、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長。老年精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』など著書多数。 ----------