浸水2メートル、ショーケースに乗り耐えた 能登の豪雨から3週間
能登半島を襲った豪雨から12日で3週間になる。石川県輪島市町野町の中心部では、浸水の深さが2メートル近くに達し、命の危険にさらされた住民もいた。 【動画】住民が撮影した動画には、町の中心部が濁流に襲われ、水没する様子が映されていた 「生きててよかった」。町中心部にある「スーパーもとや」の前社長、本谷一郎さん(76)は、店内に流れ込んだ濁流にのまれ、命を落としかけた。 9月21日午前9時45分ごろ、近くを流れる鈴屋川があふれ、店のドアから水が浸入してきたため、商品がぬれないように棚の上にあげた。 水を防ごうとドアを押さえたが、勢いが強くて止められない。午前10時すぎには直径約1メートルの流木がドアを破って突っ込んできた。 みるみる水位が上がり、顔まで水中に沈んだ。浮いていた鮮魚のショーケースをつかむと、何度も失敗しながら上によじ登り、転覆しないよう近くに浮いていた陳列棚につかまって耐えた。 「おやじ、どうだ?」。約30分後、水が引き始め、2階から下りてきた長男で現社長の一知さん(46)の声で我に返った。柱を見ると、浸水の跡が高さ約1・8メートルのところに残っていた。 町中心部で亡くなった人はいなかったものの、石川県によると10月9日時点で、この豪雨の死者は輪島、珠洲、能登の3市町で計14人、安否不明者は1人。住宅被害は分かっているだけで全壊16棟、床上・床下浸水398棟にのぼるが、今後大きく増える見込みだ。(御船紗子)
朝日新聞社