中日根尾は開幕1軍をゲットすることができるのか?阪神戦で外野デビュー&初ヒットも「精度を上げたい」と反省
足を上げ体の回転力を使って打つ根尾の打法には、ぶれが生じやすい。それをカバーするのがパワーでありバットスイングなのだろうが、まだ体が出来上がっていないため、より繊細なタイミングを求められる。狙えばインサイドは打てるが、まだ追い込まれてからの対応力も不足している。 「打ち損じが多かったのでもっと確率をあげていきたい。そこを修正していきたい」 試合後にメイン球場でルーキーの郡司らとたっぷりと打ち込んだ根尾は、午後6時を過ぎて球場ロビーに準備された多くのテレビカメラの前にTシャツ姿で立った。 それでも「1本出てほっとしましたか?」と聞かれて根尾は、素直に「そうですね」とうなずいた。 「早めに(ヒットが)出てくれので、次もどんどん出していけるよういきたい」 それが本音だろう。 「ショート・1番」で出場した4日の紅白戦では3打数無安打、7日の沖縄電力との練習試合でも2打数無安打に終わっていたが、3試合、9打席目にして初のプロの他球団との対外試合で初ヒットを打てたのである。 与田監督が積極的を評価していたことを伝え聞くと、「積極性だけではもちろんダメです。まずはそこからですが、もっともっと精度をあげていきたい」と自戒した。 一方、昨秋キャンプから新たに挑戦している外野守備はどうだろう。ライトでスタートして8回からはセンターを守った。守備機会は4度あった。根尾は「風が舞っていてどうかと思ったけど、武田さん、ベンチの英智コーチにポジショニングなどの指示をもらいながらできた。ショートと比べて(外野に)やりにくさを感じたことはない」という。
与田監督は「まだまだでしょう。いろんな意味で。ただ去年の秋から取り組んでいることで特別なことではない。しっかりと流れを作っていきながら彼の良さというものをできるだけ引き出してあげたい」と注文をつけた。 与田監督が暗に示唆したのは、5回の打球判断、処理の場面だ。無死一、二塁から近本の右中間を襲う打球を背走して追った根尾は、一度、グラブを出して捕球しようとした。だが、とうてい無理な打球。打球判断がまずかった。不必要な動作をせずに最短距離を走るべきだった。フェンスに当たった打球を処理した根尾は、中継のセカンド阿部に送球したが、阿部は本塁に投げることができずに一塁走者の生還を許すことになり近本の三塁打となった。せめて本塁でクロスプレーにしなければならない中継プレーだった。 1点を争うゲームでは、小さなミスが死活問題になる。今後、ゲームの中で様々なシチュエーションを経験していくことが重要になるのだろう。今後もショートと外野の内外野二刀流でいくのならば、なおさらキャンプで多くの実戦守備機会を得る必要がある。 試合前のシートノックでは鮮やかなバックホームを投じてスタンドから歓声が上がった。大阪桐蔭高校時代は甲子園の優勝投手。最速150キロをマークした強肩はプロでも際立つ。 根尾は「たいしたことはなかったです。もっとできると思っています、もっと追求できるように」と、ファンを感激させたノックでのワンシーンを振り返った。 果たして根尾に開幕1軍を勝ち取る力はあるのだろうか? ネット裏。中日を担当している某スコアラーは言う。 「とにかくバットを振れる。これはなかなかできないこと。やっぱり素材は違うね。あれだけのスイングをされるとバッテリーは嫌なものなんだよ。まだまだプロの体にはなっていないこと、追いこまれての対応力などに課題はある。守備も内野と外野を半々練習していて今日の中継プレーのような課題も出るが、もしかしたら早い段階で1軍に出てくるのかもしれないと考えて根尾を追いかけておかなくちゃいけないのかもしれない」 これが正当な根尾の現在地に感じた。 与田監督は、根尾に関してはキャンプ、オープン戦を通じて、「どんどん試合に出して経験を積ませたい」との考え。重要視したいのは結果よりも内容だ。代打から途中出場して7回に根尾を返す同点2ランを放った溝脇の例を出して、こんな説明をした。 「溝脇は第一打席(一塁ゴロ)の内容が良かった。本塁打に至るまでの流れがいいというか、1打席目から(打てそうな)傾向が出ていた。凡打はダメ、打ったから良しとの単純な判断じゃなく、そういう色んなつながりも見て選手を評価していく」 中日の外野陣は、この日、先制アーチでアピールしたレフトの福田、アルモンテ、センターの大島、ライトの平田らで、ほぼ固まっていて、その牙城を崩すのは簡単ではない。根尾は、その厳しいサバイバルマッチに挑戦していくことになるが、思い切りのいいバッティングに加え、内外野を守ることのできる守備力に信頼が生まれてくれば、チーム層を厚くするための貴重な存在になる可能性はある。 「実戦に入って、いいものと悪いものが目に見えてわかってくるので、いいものを形にしていきたい」 クレバーさは変わらず。2年目を迎えた4球団競合のビッグスター候補は何かをしでかしてくれるのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)