「敷地の少なくとも50%で食料を生産しなければならない」に順番待ちするオランダの小さな町
オランダのある町では、所有する敷地の半分を農地にしなくてはならない。そんな脱炭素化を進めるための取り組みを始めた町について英紙が報じている。究極の脱炭素化は、自給自足生活にあった。 【画像】オースターウォルドの町は風力発電が発展している
敷地の50%を農地に
オランダ郊外の町に住むマルコが新鮮な食材を調達するのに、わざわざ遠くのスーパーまで行く必要はない。彼の家のすぐ外には800平方メートルの区画があり、リンゴ、ナシ、ピーマン、バジル、ビーツ、カリフラワーなど、さまざまな作物が育っている。 冬の間、彼と妻は冷凍庫に保存された野菜だけでほとんど生活できてしまう。「昨日、食事のことを考えるのを忘れていました」と彼は言う。「庭を歩き回り、何か作物を見つけて、それがその日の食事になるのです」 2017年からマルコが住むオースターヴォルドは、アムステルダムの東、アルメレ市の郊外にある4300ヘクタールの都市実験地区だ。アルメレで市議会議員を務める彼が暮らすこの地区は、約10年前に構想された。 英紙「ガーディアン」によると、この地域には約5000人の住民が住んでいるが、人気は高まり、住みたい人が登録する待機リストは長くなっている。この町に住むための世界でも珍しい要件がある。それは、敷地の約半分を農業用地に充てることだ。 「オースターヴォルドに住みたいなら、敷地の少なくとも50%で食料を生産しなければならない。このルールは、世界的に見ても非常にユニークで、この地域を際立たせる要素でもあります」と、同紙の取材に対して、この地域の研究者は語る。農業のやり方は自由だ。マルコのように自分で食べるための作物を作る人もいれば、リンゴの木を数本植えるだけの人、農業労働者を雇って農作業をしてもらうための土地を所有する人もいる。
食料の10%を自給自足
アルメレ市は温暖化が進んでいるが、一方で、大きな可能性も秘めている。「オースターヴォルドの現在の気候は、40年前のフランスと同じです。このため、アボカドや柑橘類の木を温室ではなく屋外で簡単に育てることができます」と、ある住民は言う。温暖化のために農業しやすい環境に変わってきているのだ。 また、初期段階で環境に優しい選択をすると脱炭素化につながる。たとえば、敷地を農地にするとき、長く使える設備を選んだり、再利用できる資材を使ったりすることで、農園や庭で収穫される果物や野菜の二酸化炭素排出量を効果的に減らせることがわかっている。 アルメレ市のように、それぞれの住宅の敷地の半分を農地に充てることで、脱炭素社会は前進する。また、食料を買いにスーパーへ行くために車で移動する必要もなくなるのだ。 「小さく始めることが大事」と掲げているアルメレ市の最終的な目標は、住民の食料の10%を彼らの敷地で調達することだそうだ。
COURRiER Japon