複数の会社で働いています。社保加入の条件に当てはまると「複数の厚生年金保険料」を天引きされるのですか?
働き方の選択肢が増えるなか、社会保険の加入の可否についての相談が増えています。社会保険料の負担は、手取り額に影響するため、自分の場合はどうなのか悩まれるようです。 また、複数の会社で勤務する方の場合、それぞれから天引きされることに疑問を持ったり、金額が適正な額なのか知りたいといったケースも見られます。 とくに、厚生年金は将来の年金受給に影響を及ぼすため、適正に加入し、金額についても納得しておきたいものです。今回は、社会保険制度の概要を整理するとともに、加入要件、複数の会社で働く場合の保険料の計算方法についてお伝えします。 ▼扶養内で働いてるけど、労働時間が「週20時間」を越えてしまった!「社会保険」に加入する必要はある?
社会全体で支える「社会保障制度」
社会保険には、病気やケガに備える健康保険、老後や障害状態に備える年金保険、介護に備える介護保険、失業などに備える雇用保険、業務上の災害などに備える労災保険の5種類があります。これらは社会生活におけるさまざまなリスクに備えるための公的な保険制度です。 社会保険への加入にあたっては、社会保険の「適用事業所(もしくは任意適用事業所)」といった会社の要件とともに、雇用形態、勤務時間などによる従業員の要件で対象の可否が決められています。 基本的には、社会保険が適用される会社に雇用される従業員、つまり、労働の対価として賃金を得る人であれば、社会保険の被保険者となり、従業員と事業主との労使折半で社会保険料を負担します。 厚生年金保険は70歳未満、健康保険は75歳未満、介護保険は40歳以上65歳未満の人が対象となり、従業員負担分は、給与および賞与から従業員負担分が差し引かれます。 なお、健康保険については、75歳以降は「後期高齢者医療保険」へ移行、介護保険については、65歳以降は「第1号被保険者」となり、負担や納付方法が変わります。 従業員の要件において、会社の就業規則に定められた勤務時間等にもとづいて従事するフルタイムの「通常の労働者」は基本的に加入するため問題ないのですが、パートやアルバイトなどの「短時間労働者」の場合は、加入の可否の判別が分かりづらいかもしれません。 <パートやアルバイトなど「短時間労働者」の社会保険加入要件> パートやアルバイトなどの「短時間労働者」については、以下の条件のいずれかを満たす場合には、社会保険の加入対象となります(※1、2)。 ■1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上 ■フルタイムの正社員の4分の3未満でも、以下の(1)~(5)のすべてを満たす場合 (1)週の所定労働時間が20時間以上 (2)賃金の月額が8万8000円以上 (3)2ヶ月を超える雇用の見込みがある (4)学生ではない (5)従業員数101人以上の企業(2024年10月以降は51人以上の企業へ対象拡大) *従業員数とは、フルタイムの従業員および週労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員数で、現在の社会保険加入対象者数です。 社会保険適用の範囲は、段階的に拡大されており、2024年10月にはさらに拡大予定のため、今後は、社会保険の被保険者の数は増えていくことが見込まれます。 一方で、複数の会社で勤務していても、それぞれの雇用契約がいずれも要件を満たさない短時間勤務であれば、原則として、社会保険加入の対象外です。その場合には、個人で国民健康保険・国民年金保険に加入しなければなりません。