ガンバ宮本恒靖新監督の初陣ドロー采配に見えた「変化とイズム」
同点ゴールの場面は、こぼれ球に誰よりも早く高が反応。スライディングで預けたボールが、MF倉田秋を介して米倉にわたっていた。それでも指揮官は7分後には、最初の交代カードとして米倉に代えて左利きの攻撃的MF藤本淳吾を投入している。 右サイドバックを縦に並べれば、守備の強度と泥臭さは増す。引き換えとして攻撃力は落ちるだけに、勝負どころで藤本を入れる青写真を短い期間で具現化させてきた。倉田に代えて20歳のドリブラー食野亮太郎を、ファン・ウィジョに代えて192cmの長身FW長沢駿を投入していくのも、いくつかを想定・準備してきたプランのひとつだった。 勝ち点3こそ奪えなかったが、チーム全体にみなぎった一体感と闘争心、何よりも球際における激しい守備が、ここ2試合で8ゴールを奪って連勝していたアントラーズと互角の戦いを演じさせた。 「戦術的な落とし込みをする時間が少ないのは事実ですけれども、そこは上手くやりながら、相手によって選手起用も考えていきたい。ただ、チームとしてしっかりとした守備が必要だとは選手にも伝えています。前節まで25失点していたなかでそこは減らしたいので、引き続き求めていきたい」 いい守備が鋭い攻撃を生み出すとばかりに、宮本監督が前を見つめた。ガンバで、そして日本代表でも最終ラインの要を担ってきた新指揮官はサッカーの原点を「イズム」にすえて、残り16試合での逆襲に転じようとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)