取引先が営業に本当に求めているものとは…「安くていい条件」よりもっと大事な「仕事の」真理
地方のFラン大学卒で0から営業を始めた著者は、いかにして「日本一の営業」へと大変貌を遂げたのか? 「毎日が凄く辛い」「外回りをしている自分が情けない」...消極的に取り組み始めた営業の仕事が天職になるまでには、どんな心境の変化があったのか? 人と人との関わり合いである営業で得た「学び」には、どんなビジネスにも活かせるヒントが満載。仕事への向き合い方や他者の心の動かし方に迷うビジネスマン必読の話題作『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』(山岡彰彦著)から、内容を抜粋して紹介する。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』連載第4回 『「あなたから買おうと思う」…素人営業マンでも「大型契約」!? テクニック以上に大切な「不変の」極意とは』より続く
取引先が本当に求めているもの
「あんたのところの商品は他と比べて本当に高い」 納品を終えて伝票を渡すたびに、お店から言われる決まり文句です。そうは言われても勝手に卸値を変えることはできません。 「どんなに利幅のある商品でも売れなくては意味がないですよね。私たちは商品がより多く売れるためにいろいろなプロモーションを行って、より売りやすいようにお店を支援しているのです。原材料も厳選したものを使っているのでこの価格になります。その点をご理解ください」 このように伝えますが、相手はそう簡単に納得はしてくれません。営業にとっては永遠の交渉テーマです。会社としてはより高く卸したい一方で、取引先はより安く仕入れたいのですから。
営業の本質を教えてくれた“ある酒店”
北沢酒店は八百屋と酒屋に鮮魚店が合体したようなお店です。お店は大繁盛ですが、売場には箱のまま積み上げた商品、埃を被った陳列棚、酒屋といいながら店内には大きなまな板と流し台があり、そこで店主が仕出しの魚をさばいています。 店先にはずらりと自販機が並んでいますが、店内だけでなく店頭も同じ状況です。他社の飲料自販機やビールの自販機も負けず劣らず汚れています。毎回訪問するたびに汚れを拭き取って掃除をするのですが、毎日の魚や野菜の持ち込みで水が掛かったり、泥がついたりととても追いつきません。 ある日のこと、自販機に商品を充塡しようとすると機械が止まっています。他の自販機も同様です。小走りに倉庫へ向かい、配電盤のブレーカーのレバーを引き上げ、自販機に戻ると店主が傍らに立っています。 昔気質の店主は出入りの業者に対しても厳しく、他の会社の配達員が叱られている姿を幾度となく目にしていました。私も「業者はお客様のじゃまにならないようにお店の中では気を配れ」「自分の労を惜しむな。配達のクルマは遠くに停めて、お客さんが楽に店内に入れるようにしろ」といったことから、「だいたい、お前のところの卸値はなぁ」とお決まりの文句をあびせられてばかりです。 「しまった、商品を自販機の前に置きっぱなしだった。また何か言われるのかなぁ」と思いつつ、「すみません。電源が落ちていたようなので配電盤を見に行ってました」と、こちらから話しかけました。