内モンゴルで復活の兆し、朝一番の儀式。天にひしゃくで捧げる聖なるお茶
お茶が出来上がると、奥さんは大きなひしゃくにお茶を入れてゲルの外へ出ていった。私は慌てて、カメラを持って追いかけた。彼女はゲルの裏に立つと、左手にお茶の入ったひしゃくを持ち、右手の小さなひしゃくで四方に少しずつお茶を捧げた。モンゴルでは昔から、まだ誰も飲む前のお茶を天に捧げる習慣がある。 その誰も飲んでないお茶をモンゴル語で「チャー・イン・デージ」という。デージは神聖な、汚れてない、大切、など様々な意味をもつ。私が子供の時は、この習慣がほぼ見られなくなっていたが、最近復活してきた。私の母も近頃は、毎朝この儀式を行っている。 儀式が終わるとゲルに戻り、仏壇に置いてある銀碗にお茶を入れる。それから全員揃って朝のお茶を飲み、一日の仕事が始まるのだ。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第9回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。