20年投資を続ける、サンプラザ中野くんが「株価のチェックすらやめた」転換点
投資も仕事もリターンを求めすぎない
――以前の「人にはバカにされておけ」のスタイルからすれば、それでも相当な変化ですよね。投資への向き合い方が激変したのも納得です。 【中野】株も、一生懸命やろうとするほど難しいんです。特に僕は、金融系の先生方に「初心者のうちは投資信託で」と言われて、「いや、自分は個別株で稼ぐので!」なんて返したこともあるくらい、大きい成果ばかりを追いかけていたので。 でも、やっぱり精神的な余裕を保っておかないと、なかなかいいことは続きません。結局は、自分の心を穏やかに保つことのほうが大切だなと思います。これは投資に限らず、仕事についても同じですね。 ――最近では「老後に○千万貯めないと」などといった情報も見かけますが、それもあまり気にしすぎないほうがいいのでしょうか。 【中野】そうですね、もしそれで心が追い詰められてしまうなら。もちろん、備えることも大事ですけど。 ――世間では新NISAが話題ですが、そちらは? 【中野】実はそれも、まだ開設していないんです。今はただ、本当に株を持っているだけ。やり方をシフトして4~5カ月経ちますが、株価も見ていないので、どのくらい増えたのか、もしくは減ったのか、それもまったく知らないんです。 ――増減も確認されないとは、本当に一貫されていますね。 【中野】それも、妥協できないだけですよ(笑)。あとは、長年休止していた爆風スランプの再始動が決まったのも大きなきっかけでした。久々のライブでファンをがっかりさせるわけにはいきませんから。ライブまでに河合(爆風スランプのギター・パッパラー河合さん)は体重を落とす、僕は投資に時間を使うのをやめる。こういうことです(笑)。
125歳まで生きるつもりでまだまだ上達し続けたい
――爆風スランプ再始動の件ですが、26年ぶりとなる新曲のテーマは「IKIGAI」だとか。なぜこのテーマを選ばれたのですか? 【中野】元々、僕は健康にすごく興味があるんです。それでたまたま、Netflixの「100まで生きる:ブルーゾーンと健康長寿の秘訣」というドキュメンタリーを見ていたら、世界有数の長寿地域として「沖縄」が紹介されていまして。それによると沖縄の方々が長寿な理由の一つに、地域の強いつながりのもと、年を取っても豊かな「生きがい」を持てていることがあるんだそうです。 しかも、実はこの「生きがい」という意味の単語は日本語にしかないらしくて、「可愛い」とか「もったいない」とかと同様に、日本語そのままに「IKIGAI」として世界語化しつつあるそうなんです。 現に、この話を爆風のメンバーにしたら、ドラムの末吉(ファンキー末吉)からも「イギリスにも『IKIGAI』という名前のカフェがあった」と言われました。彼によると店主は香港の方で、その人も「沖縄の友人から聞いて、すごくいい言葉だと思って店名にした」のだと。 ――驚きのお話です。中野さんご自身は、何を生きがいにしておられるのでしょうか? 【中野】僕の生きがいは、なんといっても「歌うこと」です。できる限り長く生きて、生きている限り歌い続けたいと思っています。健康マニアなのもそれが理由。これからも上達を続けて125歳まで生きて、その歳でステージに立って、そのステージを降りる階段から落ちて死ぬ。これが理想の死に方です(笑)。 ――125歳! 目標がとても高いですね。 【中野】僕は本気ですよ。明治の話ですが、かの大隈重信と野口英世博士の間で「人間の寿命は125歳だね」という会話があったそうなんです。といっても、当時あった「人間は25歳になる日の朝まで成長する」という俗説と「あらゆる生物の寿命は成長年限の5倍まで」という俗説を組み合わせた軽い雑談だそうですが、早稲田大学の出身で重度の「大隈ミーハー」を自負する僕としては、この話は見逃せないですね。 それに、ただむやみに高い目標を掲げているわけではありません。例えば、Fさん(注:編集担当兼インタビュアー)は、何歳くらいまで生きるつもりでいますか? ――そうですね......まだ漠然とですが、80歳くらいでしょうか。 【中野】平均的にはそのくらいですよね。でも、80歳で死んでしまうなら、しっかり成長できるのは65歳とか、せいぜい70歳くらいまでだと思いませんか? それを過ぎると、何か壁にぶつかっても「どうせ近々引退して、何年後かには死ぬんだからもういいや。テレビでも観てよ」となってしまうと思うんです。 ――確かにその通りですね。 【中野】でも、125歳まで生きると考えれば、80歳になってもまだ45年もあります。すると自然に「まいったな。それじゃ、少しずつでも成長し続けないといけないし、お金も要るし、友達も作らないといけないし......」となって、前向きに生きることができるんです。 だから「125歳まで生きる」というのは、ただ単に大げさな目標を立てているわけではなくて、この先も長く充実した人生を生きるための戦略なんですよ。僕も60歳を過ぎましたが、125歳まで生きようと思っていますから、まだ人生は半分も残っている。そう思うと、まだまだ立ち止まるわけにはいきません。 ――確かに......! 目からウロコの考え方です。 【中野】昔、ジャズをしている友達から「ジャズの巨星には、90歳を過ぎてもなお、楽屋で『もっとうまくなりたいよな』と語り合う人たちがいる」と聞いて、それはさすがにスゴすぎる、と思ったことがありました。でも「125歳まで生きる」つもりになったことで、僕もそういう生き方のコツをつかめたんです。 現に、今なお僕は成長できている実感があります。これはあくまで我流ですが、毎朝「般若心経」を唱えることを習慣にしたら、コロナ禍を経て一度は弱った発声機能が、以前以上の水準まで高まったんですよ。 ――とても説得力があります。最後に、主要読者であるミドルの方々へ、メッセージをいただけますか。 【中野】繰り返しになりますが、やはり「周りに煽られるまま、上昇志向を持って、ストイックに仕事に打ち込んで」という生活から、「生きがいを持って、心穏やかに人生を楽しむ」という生活にシフトすることの重要性をお伝えしたいですね。かく言う私もまだシフトしたばかりですが、それだけでも見える世界が格段に変わっていますから。 【ライブ情報】 爆風スランプ~IKIGAI~デビュー40 周年日中友好 LIVE "あなたの IKIGAI ナンデスカ?" 2024年10月31日( 木)~11月17日(日) 愛知・兵庫・東京の3都市で開催! https://www.sonymusic.co.jp/artist/BakufuSlump/live/
サンプラザ中野くん(歌手)